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 翌日、澪士は報告書(レポート)を作成していた。  仕事として有料で請けた依頼には、簡単なレポートを納品している。  すると、妹の真紀が「メリクリー!」と遊びに来た。 「兄貴、クリスマスに仕事?」 「ああ、こーみえて忙しいんだ。邪魔するなよ」 「なによ、ケーキ買ってきてあげたのに」 「頼んでないし。売れ残りだろ?」 「へへ、半額。でも味はいっしょでしょ」言いながら、デスクのスノードームに気づく。 「あら、かわいらしい。誰にもらったの?」 「え? おまえにはナイショだよ」  まさか四十過ぎのおっさんからとは言えず、澪士はとぼけた。 「なによ、変な女じゃないでしょうね」  言いながら作成中のレポートを覗き見る。 「へー、こんな依頼うけてたんだ」 「バカ見るな。個人情報だ」 「いーじゃない! 木村莉音? きむらりおと?」 「リオンだ。いい奴だったよ」 「へー……え? すっごいイケメン! ヤバい!」  真紀がレポートをひったくる。 「バカ返せ! なにやってんだ!」 「えーかっこいいー、ヤバい、ちょータイプ!」 「バカ! いい奴だけど、莉音はダメだ! (とりこ)になるぞ! 返せ!」 「いい男ならいいじゃない。恋の沼にはまってみたいー」 「バカ、ダメだ! 返せ!」  クライアントの心は読めるが、妹には翻弄されっぱなしの澪士であった…… — おしまい —
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