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 人には親切にしなければいけない?  困った人には手を差し伸べなければ?    彼女は親切なつもりでも、私から見たらただのお高くとまった上から目線。    私に高口マリアの存在を教えてくれたのは同じバイト先の子。バイトの子が言うには、私にものすごく似た女性が店の前をしょっちゅう通ると言うの。 「そんなに似てるの?」と聞くと、それはもう驚くほど似てるよって。自分に似てる人間がいるなんて、最初は普通に興味が湧いただけ。  で、その子の話を聞いてから私は彼女がよく通るという時間に、外を注意して見るようになった。  初めて彼女を見た時は衝撃だった。  そっくり。瓜二つ。驚くほど似てた。でも似てるのは顔とスタイルだけ。彼女と私には決定的な違いがあった。それは……佇まいというのかな雰囲気? そういうのって、育ちからくるものなのかしら。  山の手の高級住宅街で生まれて何不自由なく育った人間と、築四十年のボロい団地で生まれ育った人間の違いね。そう思うと一卵性双生児みたいに似ているだけに辛いものがあった。  それから私は彼女について調べたの。 彼女の家はこの辺りの名家だったから調べるのは簡単。 両親が早くに亡くなっていることも、祖父母が莫大な遺産を彼女に残して死んだこともすぐに分かった。──調べていく内にすごい嫉妬心が心の暗い底の方から沸々と湧き上がって来た。  だから彼女に近づくことに決めた。  入れ替わっちゃえって。   近づくのは簡単そうだった。  彼女が誰にでも手を差し伸べる、死ぬほどお人好しのお嬢様だということが分かったから。    
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