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 私は目論見どおり彼女の関心を引くと、彼女の影のように後ろをついて行った。まんまとマンションに入ることに成功。思っていたよりずっと簡単だった。彼女は部屋に入ると少し眉をひそめて言った。 「まずシャワーでも浴びたらどうかしら」  ──だって。なんだかんだ言ってやっぱりに見下しているんだ。ま、わざと何日もお風呂に入っていなかったけど。 「シャワー……?」  「えーすっきりすると思うわ。その前にあなたのお名前を聞かせてくれる?」  名前?  偽名を使うこともできたけど、ここは不思議ちゃんのふりでもしておこう。 「アナタのナマエ、キカセテくれる……?」  オウム返し。 「私はマリア。高口(こうぐち)マリアよ。で、あなたのお名前は?」  ふふ、ここも不思議ちゃんで答えた。 「マリア……ワタシのナマエはコウグチマリア……」   シャワーを浴びながら考えた。  まずは彼女を隅から隅まで研究しなければいけない。しぐさや癖や彼女の色々な事を、爪先から頭のてっぺんまで知らなきゃだめだ。真のドッペルゲンガーになるために。誰が見ても間違いなく私が彼女だと思われるために──。  シャワーを出てキッチンに入るといい匂いがした。 「あら、やっぱりサイズぴったり。似合ってる。パスタで良かった?もう作っちゃったけどふふふ」 「……ウン」  私は彼女が作ったカルボナーラをガツガツ食べた。 こんなに可哀想な女なのよと彼女に同情させようという思いもあったけど、実は本当にお腹が空いていたから。──お嬢様は料理も上手だ。 「はあ、美味しかったー」  ここだなと頃合いを見計らって、彼女とお友達になるために、不思議ちゃんキャラの着ぐるみを脱いだ。        
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