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 スマホを取り上げて閉じ込めたのに、あの部屋に家電(いえでん)があったなんて。声が聞こえてすぐにコード引っこ抜いたけど。危なかった。でも大丈夫。  「うちにドッペルゲンガーがいます」なんて誰が信用するの。それなのに、あの刑事、少し興味持っていたみたい。でも出来るだけ事実に近いことを話した。話し出したら本当に高口マリアが乗り移ったみたいにスラスラ言葉が次から次に出て来て自分でも驚いた。あれで良かった、百点満点──下手に嘘は駄目。  さてと、彼女から話を聞き出すのに一ヶ月もかかっちゃった。それにしてもあの子ったら警戒心ゼロで、まるで催眠術にかかったみたいに何でもペラペラ喋っちゃう。でももう用無し。馬鹿な親切心がになったってことね。あんなに簡単に家に入れてくれるなんて、駄目で元々の計画だったのに。 普通、お腹空いたなんて知らない人に言われたら怖くて逃げちゃうよね。    養育者の考えをやたらと押し付けて厳しく育てるのも良し悪しってことよ。死んだ爺さんったらマリアを虐待してたって言うし、敬虔なクリスチャンが笑っちゃう。それは病気にもなるよね。  とにかくもうそんなことはどうでもいいや。バイトもLINEで辞めてアパートも解約。ガラクタの荷物も私の存在と一緒にすべて廃棄。やったー! これからは私は大金持ちの高口マリアよ。  私が居なくなったところで誰も気にしない。  さて、あとはバラバラにした高口マリアの死体をどう始末するかだな。               END        
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