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彼女は私の影のようにひたひたと後ろをついて来ました。エレベーターで13階まで昇って彼女を部屋に招き入れると、私は今度こそは失礼を承知で彼女に言ったのです。
「まずシャワーでも浴びたらどうかしら」
彼女から発散される臭いは、後からエレベーターに乗る人に申し訳無いくらい酷いものでした。
「シャワー……」
「えーすっきりすると思うから。あ、その前にあなたのお名前を聞かせてくれる?」
「アナタのオナマエ、キカセテくれる?」
彼女はオウム返しに私に聞いて来ました。私は答えました。
「私はマリア。高口マリアよ 。で、あなたのお名前は?」
「マリア……。ワタシのナマエはコウグチマリア」
またオウム返しです。
私はここで早くも諦めました。彼女はきっと教えたくなかったのでしょう。もう聞くまいと思いました。その時は別に彼女と友達になろうなんてこれっぽっちも思っていませんでしたから、だから名前なんてこの際どうでもいいと思ったのです。
とにかく彼女の空腹を満たしてあげることが先決です。それが出来たら、祖父母の教えもある程度は果たせると思いました。自己満足と言えば自己満足でしょうか。
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