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パスタはペンネ。
卵とベーコンとたっぷりのチーズ、それと黒胡椒のカルボナーラ。ベーコンをじっくり弱火で炒めると香ばしいいい香りがキッチンに漂いました。
パスタが茹で上がるころ、バスタオルをソフトクリームみたいに頭に巻いた彼女がキッチンに入って来ました。フレグランスソープの甘い香りを匂わせて。ベーコンとソープの香りが混ざって少し混乱してしまいましたが。
私のワンピースを来た彼女はもう完璧にどこから見ても……もう一人の私でした。落ち着いていたはずの心臓が、またトンと跳ねました。
「口に合うか分からないけど」
彼女はパスタを盛った皿を見るなり、椅子に腰を掛けるといただきますも言わずに、ペンネをフォークでカチャカチャ刺し始めました。よっぽどお腹を空かしていたらしくて、完食まであっと言う間で、最後の一本のペンネでエッグソースをきれいに掬い取ったのです。それは気持ちいいぐらいの食べっぷりでした。
「美味しかった」
「え?」
「すごく美味しかった」
そう言って、彼女はまるで花がパッと開いたような明るい顔を見せました。
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