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「そうですか、その女性との出会いは分かりました。とても不思議と言いますか強引な印象ですね。それと、あなたは覚えていないと仰っいますが高口マリアさん、あなた確かに通報していますよ。音声も記録に残っています。あなたは"うちにドッペルゲンガーがいる"と大変怯えた様子で通報されているのです。ドッペルゲンガーなんてね、いたずらかと思いましたが、とりあえず事情をお伺いするために足を運んだわけですが……。薬の服用のせいで通報の記憶はないとおっしゃるのですね」 「はい記憶にありません」 「そうですか。これが服用されていた薬ですか。これは抗うつ剤ですね」 「はい。私はもう何年も心療内科に通院しています。そしてずっと薬を飲んでいます。たまにあるんです、混乱してしまうことが。あの、詳しい病名も言った方がいいですか」 「いえいえ、そこまでデリケートな個人情報は大丈夫す。そうですか、分かりました。では特に異常はないということですね」 「お騒がせしてすみません」 「ちなみにご家族は」 「家族はいません」 「お一人も?」 「父母は早くに他界して、祖父母に育てられました。その祖父母も三年前に立て続けに亡くなりました」 「失礼ですけどお仕事は?」 「お恥ずかしい話ですが私は一度も外で働いたことがありません。祖父母が残してくれた遺産で暮らしているんです」
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