お世話になります、小鳥先生

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「ところで、最初は少年の魔力を封じたいと言っていたが、その先のことは考えているのだろうな?」 「先?」 「ブリジットのことはよく知っていると言っただろう。君たちは代々オコナー家に仕える魔導士の家系であったはずだ。つまり、魔法を使い、戦うことが君たちの仕事だ。違うか」  フレディは眉をひそめた。兄弟の母に魔法を教えていたと言うのだから、出身を知っていても不思議ではないということに今更気が付いた。  コルムは更に続ける。 「あの少年はまだ幼いからともかく、君ほどの年齢で、かつ魔法に精通しているのであれば、すでにオコナー伯爵に雇われていて当然ではないか? ブリジットを失ったのなら猶更、伯爵は若い力を必要としているはずだ。しかし、君はここを立ち去る様子がない。伯爵から与えられた仕事はないのか?」 「ひっきりなしに用事言いつけてくる奴の台詞とは思えねえな。ここを離れる余裕なんてくれなかったくせによ」 「話をそらすのか?」  フレディは舌打ちした。 「伯爵がどういう人間か知らないなら教えてやるけどな。魔導士なんて使い捨てのゴミだと思ってるような屑野郎だぜ。給料も出ないのに戦の手伝いなんかさせられてたまるかよ」  ヒベルニア島は、王家の対立により東西に分かれて争いが絶えない。少し前に西ヒベルニアが南の大陸にあるロイアレス王国に戦争をしかけた挙句敗北してからというもの、治安は悪化する一方である。ここは東ヒベルニアだが、西の治安の悪化と経済力の低下により、こちらの貴族達も徐々に力を落としていた。フレディが仕えていたオコナー伯爵家もまた、その例に漏れず没落の一途をたどっている。 「なるほど。それで逃げて来たと」 「ああそうだよ。悪かったな」 「悪くはないが、その後どうするかは考えているのか?」  フレディは押し黙った。考えてはいない。考える暇もなかったと言って良い。何せ、ニッキーがあの調子である。そのことは、コルムも承知していたようだ。それ以上フレディを追いつめるようなことは言わなかった。 「少年の修行にはまだ時間がかかる。ゆっくり考えるといい」  その時、どかんと一際大きな爆発音がして、ニッキーの泣き声が響き渡った。 「わーーー! 燃えたー!」
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