こんにちは、小鳥先生

3/4
6人が本棚に入れています
本棚に追加
/28ページ
 一方、じっと上を見上げているニッキーが、微動だにせずこう言った。 「兄ちゃん」 「なんだよ」 「あの小鳥さん、喋ったよ」 「は?」  いよいよ、弟の言っていることの意味がわからない。遂におかしなものまで見えるようになってしまったのだろうか。これ以上面倒見きれないのだが。そう考えながらも、ニッキーの視線を追いかけて瓦礫のてっぺんを見てみる。すると、掌に乗りそうなほど小さな小さな白い鳥が、目いっぱい翼を広げたところだった。  その鳥は、ぱたぱたと羽ばたいてニッキーの手元までやってきた。ニッキーが慌てて両手を差し出すと、そこへちょこんとおさまるようにとまる。そして、左側の翼をニッキーにつきつけるようにして、こう言った。  そう、「言った」。小鳥が喋った。 「今の魔法は君だな。まったく、とんでもないことしてくれたものだ」  ニッキーが、大きな目をこれでもかというほどまんまるくして、まばたきすることも忘れている。フレディもまた、煉瓦の塊をかかえたまま目を丸くしていた。 「まあ、ここに住んでいるのは私一人だ。誰かが生き埋めになっているということはないから、そう慌てることはない。無論、片付けはしっかりしてもらうがな」  兄弟は顔を見合わせて、同時に首を傾げた。随分と、想像とは違う展開だ。  フレディはおそるおそる、その小鳥に話しかけてみる。 「ここに? あんただけで住んでたの?」  恐ろしいことに、小鳥はきちんと受け答えをして見せた。喋るたびに小さな嘴がぱくぱくと動いている。 「なんだ。私が煉瓦造りの家に住んでいたのがそんなにおかしいか」  おかしいのはそこだけじゃないんだけど。最早何を聞けば自分の気が済むのか、フレディ自身にもわからない。 「ここに住んでるのは、コルム・オルークって人だって、聞いてたんだけど」 「いかにも。私がその、コルム・オルークだ」  フレディは信じがたい気持ちで母の手紙を取り出して、もう一度目を通してみる。小鳥だとはどこにも書いていない。人間の姿をしているとも、書いていないだのが。確かに、書いてはいないのだが。
/28ページ

最初のコメントを投稿しよう!