お世話になります、小鳥先生

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お世話になります、小鳥先生

 コルムはまず、ニッキーの小さな額に翼をかざしてぶつぶつと呟いた。翼のあたりが淡く青く光ったかと思うと、額には円で囲った六芒星が現れている。六芒星の隙間にはみっしりと文字が刻まれているようだが、フレディには読めなかった。フレディは知らない魔法なのだろう。  一方のニッキーは、眉をひそめて居心地が悪そうにしている。額に落書きをされたからといって怒るような少年ではないのだが、低い声で唸った。 「なんか気持ち悪い」  早々に文句を言われたコルムは、怒るでもなく平然として言った。 「だろうな」  保護者であるフレディは小鳥を睨みつける。 「何したんだよ」 「魔封じを施した」 「本当か? おふくろの魔封じでこんなふくれっ面にはならなかったぞ」 「当然、普通の魔封じではない。私の力で抑えているわけではないからな」 「……全然意味わかんねえ」 「少年の力に向かって、力を抑えろと訴えかけている状態……いわば、暗示をかけているだけだ。まずは自分で自分の魔力を抑えられるようになってもらう」 「それって」  強制力がなく効き目が薄いのでは、とフレディが言おうとした矢先、ぱりん、と硝子が割れるような音がした。ニッキーの方を見ると、額に描かれていた六芒星は消え失せ、きらきらと青い光が宙を舞っている。ニッキーは青い光が目に入るとでも思っているのか、じっと目を閉じていた。小鳥の暗示を無意識に突き破ってしまった、つまり、自らの魔力を抑えることができていないと、そういうことだろうか。  一方、コルムは、やれやれ、とばかりに頭を振った。 「先が思いやられるな」 「……ごめんなさい」 「もう一度やるぞ。その暗示を維持したまま、瓦礫を片付けろ。君一人でだ」  これには、ニッキーだけではなくフレディも驚いた。 「それが修行?」 「そうだ。不満か? もしそんなことができるようになれば随分と助かるだろう」  フレディは眉間に皺を寄せた。 「おふくろがどう伝えたのか知らないけど、そんな悠長なこと言ってないで、もうこの力を完全に封じてほしいんだ。あんたならそれができるんじゃないのか」 「ほう?」  興味深い、とばかりにコルムはフレディの目をじっと見る。
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