お世話になります、小鳥先生

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「彼自身が己の力を完全に自分のものにできれば、使わないようにすることは簡単なはずだ。それではいけないか?」 「それは、確かにそうだけど……でも、ニッキーだけで家の瓦礫まるごと片付け? 一生終わんねえよ?」 「終わらせるのだ。少年きちんと力を制御し、思い通りに魔法を操ることができるようになれば、これくらいは造作もないこと。そして、いつまでも力を制御できるようにならなければ、一緒に住んでいる君の人生が終わるぞ」  これについては、笑い話にもならない。 「……それは、まあ、確かに」 「自分の力なのだから、自分で制御できるようにならなければならん。それも、今すぐにでも、だ。少年の成長を何年何十年と待っているわけもいかないだろう。これほどの魔力だ。同じ年頃の子供と同じように修行していては、いつまで経っても自分で制御できるようになどならない」 「そうは言うけど」 「私が封じてしまうことは不可能ではない。しかし、そうして何十年と誰かの封印に頼って生きるのが少年の望みか?」 「何十年は言いすぎだろ」 「本当にそう思うか? 君はいくつになる?」 「……二十だけど」 「今の君が少年と同じ魔力を有していたとして、制御できると思うか?」 「……思いませんけど」 「この少年の魔力は二十にもなる己の兄をはるかに凌駕している。つまり、普通に修行していては二十になってもこの魔力を自在に操ることができないかもしれない。このまま安穏と過ごしていたら少年が二十になっても自分の力を自分で制御できないかもしれない。そうは思わないか?」  小鳥の熱弁に、フレディは思わずのけぞった。事前に母ブリジットから話を聞いていたからだろうか。それとも、この小鳥が優秀な魔導士だからなのだろうか。あまりにもニッキーの事情について、呑み込みが早すぎると感じたのだ。それこそ、生まれたときからニッキーを知っているフレディよりも状況を正しく把握しているようにさえ、思える。  フレディの戸惑いなどなんのその、コルムは更にたたみかけてきた。 「もう一度聞くぞ。あと何年、何十年と、誰かがなんとかしてくれるのを待つのが少年の望みなのか」  これには、フレディより先にニッキーが、悔しそうに首を振った。ニッキーもいつまでも子供ではいられない。何より、いくら守ってやろうにも、フレディにはニッキーを抑えるだけの魔力がない。フレディは諦めて口を挟むのをやめた。
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