File.1  閏、異星に立つ その2

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File.1  閏、異星に立つ その2

 ノルディックエイリアンらしき少女を助けるために、閏は少女と男達10人に近づく事にするがある考えが頭をよぎる。 「よく考えたら、あの10人… 宇宙人だから見た目通り男とは限らないか…。それに、10対1だから、10人の方が悪いと思ったけど、あの娘のほうが悪い可能性もある… もう少し、様子を見たほうがいいかもしれない… ツクはどう思う?」  閏はここに来て尻込みしてしまい色々理由を付けて、躊躇し始めるがそれには理由があり、細身で筋肉もあまりついていない閏は自分の戦闘能力に自信がない。  対する10人は、体格がよく頭に角の様なモノが生えた者が5人、トカゲのような姿が2人、蟻のような姿をした者が3人で、超能力が使えると言っても躊躇してしまうのは仕方がなかった。 「キュウ…!」  そんな閏にツクは、少し強めに鳴いて激励する。 「そうだね、こんな事で尻込みしていたら、警察官になんてなれないよね!」  ツクに励まされた閏は、変に上がったテンションも後押しして意を決し走り出す。 「おい、この間はよくもやってくれたな!」 「この前の借り、返させてもらうぞ!」 「俺たちの事、忘れてないよな?!」  男達は大声で凄みながら、強い言葉で少女を恐嚇してくるが、彼女は顔色一つ変えずに面倒くさそうに右手を腰に当てながらこう言い返す。 「一々倒した相手なんて、覚えているわけないじゃない…。強い相手ならまだしも… 覚えてないって事は、どうせ弱かったんでしょう? そんな奴らが頭数を揃えたところで、私に勝てるとでも思っているの? どうせだったら、20人ぐらい連れて来なさいよ。まあ、それでも勝てないと思うけどね」  10人に絡まれているにも関わらず、少女は余裕の表情でまったく怯えた様子も見せずにそう答えると、その態度を見た男達は更に苛立ちを募らせる。 「聞いていたとおりに生意気な女みたいだな!」 「俺ら男女平等だから、女でも容赦しないからよォ!」 「そのほうがいいと思うわよ? そうしないと、すぐに終わっちゃうから」  少女はそこまで言うと構えは取らないが、意識を鋭敏化させ戦闘態勢に入る。  すると、鋭敏化した気配察知能力が自分近づいてくる気配を感じ取り、彼女は目線だけをそちら側に向けて、気配の正体を確認するがそこには誰も居らず気配も消えていた。 (!? 気の所為?)  少女がそう思った瞬間、閏は彼女の右側にテレポート(瞬間移動)で現れ、彼女の右腕を掴むともう一度テレポートで少し離れた所に瞬間移動する。 (テレポート!?)  少女が突然の出来事で驚いている所に、閏はこう声をかけると彼女の腕を引っ張りながら、今来た道を走り出す。 「僕と一緒に逃げよう!」 「えっ!?」  閏に腕を引っ張られた少女は、自分に何が起きているのか理解できないまま、言われたとおりに戸惑いながら一緒に走ることにする。 「待て、コラ~!!」 「逃がすか~!!」  男達は相変わらず大声を出しながら、追いかけてくる。  閏は体力には多少自信はあるが、足が速いわけではないので、追いかけてくる男達との距離は少しずつ縮まってくる。 「キュウ…!」 「えっ!? このままだと追いつかれる?!」  ツクはレーダー機能で男達との距離を計測して、閏に報告する。  そして、その閏とツクのやり取りを見た少女は、心の中でこう思う。 (どうして、肩に何か珍しい生き物を乗せているの!?)  まだ、混乱しているのか少女は突っ込むところを微妙に間違える。  閏のテレポートは現状では未熟で、あまり長距離を移動することはできず、先程のような不意をついた奇襲にしか使えず、移動するなら正直走ったほうが速い。  狭い路地を抜けて、空き地のような場所に出た所で閏は後ろを振り向くと狭い通路を抜けてくる先頭の男に向かって、サイコキネシスを放つことにする。 「やあっ!」  掛け声を言ったのは、未熟な閏にはそのほうが力を発するイメージをしやすいからである。  先頭を走っていた男は、閏の不意を突いた強力なサイコキネシスによる攻撃を受けて、今走り抜けてきた通路まで派手に吹き飛ばされる。  後ろを走っていた男は、自分に飛んできた男に反応できずにぶつかり、二人してその場に倒れてしまう。  そして、その倒れた二人によって狭い通路は塞がれる形になり、後ろに続く男達は閏達を一時的に追えなくなってしまう。  その間に再び走り始めた閏達は、男達から逃げ切ることに成功する。 「よし、追ってこないみたいだね」  閏はクレアボヤンス(千里眼)を使って、男達が追ってこないことを確認すると一安心する。  ただし、クレアボヤンスといっても、未熟な閏の今の能力では視力が超良くなるだけの望遠鏡代わりの能力である。。 (コイツ… テレポートにサイコキネシス、それにクレアボヤンスまで使えるなんて… 只者では無いわね)  少女は閏の戦闘能力をそのように分析すると、一応感謝の言葉を述べておくことにする。 「こちらからは、別に助けてくれとは言ってないけど、一応礼は言っておくわ、ありがとう。でも、見ず知らずの相手を助けるなんて、随分とお人好しなのね」 「別にお礼なんていらないよ。僕が君を助けたのは、宇宙警察官を目指す僕が困っている人を見過ごしては駄目だと思ったからだよ」  閏は理想に燃える輝いた瞳で、彼女の感謝の言葉にそう返すとその表情を見た少女は、心の中でこう思っていた。 (宇宙警察官ね… でも、理想に燃える好青年って感じで、ちょっといいかも… それに、中性的な顔立ちでカッコいいし… って、私は何考えているのよ! いくら助けられたからって、今日会ったばかりの男にこんな感情を持つなんて! これじゃあ、まるでイケメンに弱い尻軽じゃない…!!)  閏の髪型は綺麗な黒髪の少し長めのショートカットで、顔は中性的で整っており細身で草食系といった雰囲気を漂わせているために、女性の警戒心を抱かせない好青年に見える外見をしている。  そのために、少女がそのような気持ちを抱いてしまうのも仕方がないが、彼女はその浮ついた気持を否定してこう言ってくる。 「少し助けたぐらいで、勘違いしないでよね! 私はそんな軽い女じゃないから!!」 「何の話!!?」  突然自分に向けて、そう言い放った少女に閏は困惑して、その言葉しか出てこなかった。 「じゃあ、僕はこれで…」  閏は早くこの少しおかしな少女から離れようと思い、そう言ってバス停の方向へ歩き出そうとすると超能力を使いすぎたのか頭がふらついてしまい、それに伴い体もふらついて倒れそうになってしまい、それを見た少女は咄嗟に閏の体を支える。 「危ない!」 「ひゃう!?」  その時、閏の体を支える少女の手が偶然にも閏の胸に当たり、閏は驚いて変な声を出してしまう。 「何を変な声を出しているのよ… 男が胸を触られたぐらいで… アレ… この柔らかな馴染みのある感触は…?」  察しのいい読者様なら既にお気づきであろうが、閏は女の子で所謂『僕っ娘』であり、少女はその事を確認するために、更に数度その柔らかな感触を確かめると、閏にこのような確認の質問をする。 「アナタ… 女の子だったの…?」 「そうだけど…」  事故とは言え胸を触られた閏が恥ずかしそうにそう答えると、少女からはこの様な言葉が返ってくる。 「私のトキメキを返しなさいよ!!!!」 「さっきから、何を言ってるのこの娘!?」  閏は同性とはいえ胸を触られた挙げ句に、このようなわけのわからない抗議を受けて、このおかしなツンデレ口調の少女を一時の正義心で助けたことを少し後悔していた。  ※恐嚇  おどしつけて恐れさせること。  ※追矢閏(おいやじゅん)  17歳  中性的な雰囲気と整った顔立ち、少しだけジト目気味ではあるが、よく見ると美少女であることがわかる、オカルト好きの一人称『僕』の『僕っ娘』美少女。  正確は真面目だが少しダウナー気味なので、人付き合いが苦手なので基本一人でいる事が多いが、友達は欲しいと思っているが現在はいない。  服装はスカートよりズボンという男の子の格好を好み、髪型もショートを好み、口調も男言葉と女言葉が混じっていてジェンダーレスなところがある。  だが、男に成りたいわけでもなく、自分でも何故女性らしい格好をしたくないのかよくわかっていない。  アンニュイな雰囲気とその整った中性的な顔と細身ではあるがスタイルのいい体で、男女問わず一定の人気があり、好意を持たれるが人付き合いが苦手で、人と話すのも苦手なので浮いた話はない。
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