第四回氷室冴子青春文学賞

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第四回氷室冴子青春文学賞

 でた、このエッセイにあまり求められていない真面目回(⁠・⁠∀⁠・⁠)  自称、氷室冴子青春文学賞マニアとして、自戒と挑戦される方の参考になればということで書き記しておきます。  2022年9月29日、第四回氷室冴子青春文学賞の結果が出ました。  わたしは人生ではじめて最終候補に選んでいただきました。  うほう。と声が出るくらい豆板醤多めの講評ではございましたが、こうして先生方から選評をいただいたのがはじめてなので、学びがとても多かったです。  最初は久美先生に知沙の気持ちを180度、逆にとらえられていたのがたいへんショックでした。でも、第一回から久美先生の講評は一貫してるんですよね。すこしいじわる(茶目っ気のあるいたずら心)に、というメッセージだと受け取りました。たぶん久美先生、ほんとうは知沙がだんごを喜んで切り捨てたなんて読んでいない気がします。そういうかたではないので。(そもそも結果が出たので十数人に読んでもらいましたが、そう読んだ人は一人もいませんでした)  それが分かると「おしっ、わっかりました!」となりました。  ただ、以下の講評がありましたが、それは久美先生が本賞への情熱のあまり判断を誤っていらっしゃるように感じました。 “だって、彼は、話したり書いたりすることは「苦手」で「ゆっくりしかできない」キャラクター。口に出して話すのがうまくできないとしたら、思ってること考えてることはどうか? 整理や言語化がふつうなはずはない。”  だんごは実際にうちの長男の小学校時代のクラスメイトをモデルにしました。  だんごとすこし違って左半身もうまく動かせない子でした。運動となればゆっくりしかできない、話すことができないのですが、頭の整理や言語化(思ったことを書くこと)は普通でした。  それは長男にも当時の担任の先生にも取材をしていたのでたしかです。計算などは長男以上の速さでノートに書いていたそうです。  久美先生は「はずはない」と断言されていますが、それはご自身の経験からそういう子に出会ったことがないのだろうと思うのです。  話せなくとも、頭は普通やそれよりはやく回る子もいます。そこは「ご自身の経験上はいなかったんだけど、そうなのかな? と思いました」と講評いただくべきだったように思います。  審査委員長をされている先生なので影響力があります。障害をもった子が整理や言語化が普通なわけがないと言い切るのはとても危険だと感じました。良いか悪いか、数千人単位が目にする賞ではないので大事にはならないかもしれませんが、ふと障害をお持ちの方が読んだら本賞の価値が下がってしまうおそれもある。わたしはそれを望みません。  審査する上の立場からのご指摘となると、口に出して話すことができない障害をもった方は整理や言語化が普通なわけないのに、作者は間違っている、と誰もが思うでしょう。  また、要支援児童という言葉を使われていますが、要支援児童は法令上定義されている言葉なので、だんごのような子がみんな要支援児童というわけではありません。この物語では要支援児童かどうかの判断はつかないです。念のためその点も誤解が生じませんように願いたいです。    今度からはちょっと感情をひと呼吸してから講評文章に落としてほしいなと思います。 (モデルとなった長男のともだちと障害とともに生きるみなさまの名誉のため、ここはさすがに書かせていただきました)    さて、大賞や準大賞、特別賞に選ばれず残念とか、悔しい、という気持ちはあんましなかったです。  それより、やっぱり最終候補に残ったというちいさくとも結果を得られたこと。そちらのほうが嬉しかったです。  蝉なら勤労感謝の日まで生きながらえたくらい嬉しかった。そんな感じ(⁠・⁠∀⁠・⁠)  今度はクリスマスまで生きようね。  ただ、今回、別の悔しさはありました。それは後ほど。    今回のトピックスとして、  ・実に3年ぶりに大賞作品がでたこと  ・審査員の先生方は準大賞など出したかったでしょうが出せなかったこと  ・かといってレベルはめちゃくちゃ高かったこと  といったところかと思います。  毎回、応募作で規程を守られている作品はなるべく読むようにしていますが、今回の応募作はおそらく今までよりレベルが数段上な気がします。  それになにより、平戸萌さんの「私が鳥のときは」です。  なんでしょう。ここ2、3年で本を読んだ中でも、わたしのなかではトップ5に入る小説でした。当然、プロが書かれた数多の作品より感銘は上だったということです。  圧倒的すぎて、平戸さんに次ぐ賞は出せなかったのではないでしょうか。たとえばわたしの作品が準大賞に選ばれていたらとすると、とても10万円はいただけなかった。それほどでした。ぜひ未読の方はお読みいただければと思います。  あと、いつも思うのですが、みんな一生懸命書いていらっしゃる。時間と労力をかけて。なので、応募要項はしっかりと見て応募されたほうが。と、思います。どんなに最高傑作でも今回なら四作応募されたら選びたくても選べません。それはとってももったいないよ……。と、思うのです。  先に悔しいことがあったと書きました。  それは、エブリスタで開催している文学賞でありながら、第一回のとりをさん以外はエブリスタを使っていない方が受賞されたことです。いわゆる佐原さんも平戸さんも公募勢だったのだと思います。氷室冴子青春文学賞があるから、登録して作品を上げて応募されたという経緯でしょう。  佐原さんは応援していますし、平戸さんも応援していきますが、エブリスタで書いているわたしたちとしてはとても悔しい。そう感じないといけない。そう思いました。  ひとは一人では生きていけない。  久美先生の言葉を借りれば、作家はテクストに一対一で対決を挑むようなものです。そこは不明瞭で孤独な戦い。  わたしはエブリスタに来る前、公募で18連敗くらい?(有名な文学賞はほぼすべて出していました)して、もうダメだ、と泣き、誰かに読んでもらえればと思ってエブリスタに来ました。真っ暗な孤独な戦いから逃げたといってもよいと思います。  でも、エブリスタでわたしは書く喜びをもらいました。  甘いのではないかと心のどこかで思いつつも、助け合いながら、励まし合いながら、実力を上げてこられたような気がしています。  ひとは一人では生きられない。作家もひとりじゃなくていい。励まし合いながらテクストに挑むことができる。  氷室冴子青春文学賞はエブリスタ内の賞です。エブリスタで書く人がいつか大賞をとり、それを証明してほしいなと切望します。  わたしはというと、第二回から本賞に挑んで、平戸さんの「私が鳥のときは」を読んで、大きな気づきがありました。  ネガティブではありません。あしからず。  結論からいうと、氷室冴子青春文学賞は女性でないと不可能に近い。  ということでした。  平戸さんの性別は存じませんが、男性であれば驚愕としか言いようがありません。  とりをさんのへびおとこはすこし毛色が違いますが、今の先生お三方になってからの第二回、第四回受賞作は間違いなく往年のコバルトものの系譜にあります。  というか、いまさらですが、第二、第三の氷室冴子先生を発掘したい文学賞なので当たり前です。  赤川次郎さんはまた別として、コバルト文庫の作家に男性はほぼいません。こと少女文学に限れば男性はいないのではないでしょうか(知らないだけでいらっしゃったらごめんなさい)。  男性ではいわゆるコバルト少女小説は書けません。書けたとしても、少女として過ごした経験がないので、どうしても駄作となるんだろうと思います。  いやいや、それは卑屈かなと自問したのですが、漫画「バキ」を女性に書いてくれと言っても書けないでしょう。それと同じだと思い、やはりそうだと思いました。  昨年のちょうど今頃、とある方からDMをいただきました。いつもワイワイ楽しく過ごさせてもらっているエブリスタ仲間ではなく、時々しっとりお読みいただいていた読者様でした。(お名前出さないのでご容赦ください) 「あなたは必ずプロになる方です。今の文学界にあなたのように熱く優しい文体を書ける方はなかなかいません。氷室冴子文学賞への情熱を拝見させていただきました。応援しておりますが、できることならば文芸誌主催の文学賞に挑戦してプロになっていただきたい。そちらのほうが可能性があると私は思います」  という、ありがたすぎるお中元お歳暮レベルのお言葉をいただきました。  わたしの夢は、救ってくれたエブリスタさんとみんなへの恩返しとして、エブリスタ主催で将来本屋大賞に繋がる可能性のある氷室冴子青春文学賞を受賞すること。でした。  それが、最近はすこし変わってきました。   妻に癌が見つかってから、まあまあ一生懸命生きてきました。執筆はだいたい夜中から。毎日寝不足で老けましたw  子どもたちも大きくなり、夜中に勉強していたのか、飲み物を求めて夜中に降りてくる機会が増えました。 「お父さん、まだ書いてたんや」 「うん。全然書けへん。やっばい」 「氷室冴子文学賞、とれたらいいな」 「うん。ありがとー」  そんな会話を子どもたちとも交わせるようになったなぁと感慨深いものがあります。  頑張ったら、頑張りに頑張り抜いたら、夢が叶うことがあるんだよ。  最近、次第にそれを見せたくなりました。  長男は高校野球に初心者ながら挑み、がんばってます。  次男はいじめられてた(気づいてやれんかった。ほんとごめんよ)のに、立ち向かって楽しみを見つけようとしています。  妻は髪の毛も眉毛もまつげも全部抜けてしまって、吐いて吐いて、それでも癌を身体から取り除こうと戦っています。  わたしたち家族は天国へ先にいってしまった長女の分、人より1.3倍一生懸命に生きると誓い合っています。  先頭に立って、結果を出したい。  今はこれが夢かもしれません。  氷室冴子青春文学賞はとても素晴らしい賞です。間違いなく挑戦しますが、プロになる最短の道はどんな方法があるのか。それを調べて、その道に重きを置こうと思います。  次々に受賞や書籍化を叶えるエブリスタの仲間のみんな。公募に挑んでいる昭島さん。受賞ならずとも諦めずに執筆に励むみなさん(わたしも今ここです)。  わたしはエブリスタにいることで間違いなく皆さんから刺激を受けています。  ありがとうございます。  さあ、夢に向かいますか。  って、感じ(⁠・⁠∀⁠・⁠)  次回はいつもどおりどうでもよいの書きます(⁠.⁠ ⁠❛⁠ ⁠ᴗ⁠ ⁠❛⁠.⁠)
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