俳優王に俺はなる! 1巻

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俳優王に俺はなる! 1巻

 こんばんみ(⁠・⁠∀⁠・⁠)  みなさま、是枝裕和監督をご存知でしょうか。万引き家族でパルムドールを、つい先日は怪物でクィアパルムを獲られた世界に誇る映画監督でございます。  わたくしこと山城木緑。  じつは、もしかしたらのもしかしたら、いや、もしかしたら中のもしかたらもしかしたらもやしかしらのもしかしたら、この是枝裕和監督とカンヌでスタンディングオベーションを受けていたかもしれない可能性があったのです。  結果、なかったですけども(⁠.⁠ ⁠❛⁠ ⁠ᴗ⁠ ⁠❛⁠.⁠) (途中、「もやしかしら」が隠れています。探せた方に楽天ポイントを2ポイント差し上げます)    今回はそのときのお話。  わたくし、大学生のとき、愛読書のひとつに『テレビブロス』という雑誌がありました。  TV雑誌なんですが、TVのことはあんまし載ってない尖ったサブカル満載の雑誌でございました。  電気グルーヴ  掟ポルシェ  岡田斗司夫  曽我部恵一  忌野清志郎  しりあがり寿  などなど、連載陣も当時は尖っておりました。  そのTVブロスに珍しくオーディションのお知らせが1ページまるごと使って載っておりました。 『ワンダフルライフ』出演者オーディション開催  主演はARATA、今の井浦新さんでした。    当時、大学生だったわたくしの部屋は、鍵ではなくナンバー式の玄関扉でした。知り合いすべてに番号を覚えられ、わたしの部屋は世界一プライバシーのないお部屋でした。オートロックなのに。  わたしが買ってきたTVブロスを勝手に読んでいたのは三島という高校からの友人でした。 「なんか映画のオーディション載っとる」 「へえ」 「出れば?」 「へー、ふーん」  この三島の呼びかけの時には興味を示さなかったわたくし。  その夜、わたしはレンタルビデオ屋のバイトに向かいました。  うわ、ラッキーや。  わたしは久しぶりにバイトでテンションを上げました。  その夜は滅多にシフトに入らない中城(ちゅうじょう)さんと一緒だったのです。  19歳くらいだったわたくし木緑は、この椎名林檎似のお姉さんこと中城さんにほのかな恋心を寄せておりました。  中城さんは、基本しゃべりません。時折笑顔を見せてくれるものの、普段なにをしているのか、何歳なのか、何もわからないミステリアス感に溢れていました。そういうところにも惹かれておりました。  中城さんに会うと、いつも小松未歩の謎が流れる始末でした。 ♪この世であなたのあーいーをー  手にーいれるもーの  踊る ライトみーつめーてー  わーすれーないー  ああ  謎がとーけてゆくー  きーみーはまーだ  うたがーうことなーくー  友達と呼べた日々過ごし  今もずうっとー  涙あふーれー止まーらなくーて  失うことだけを教えていくつもーりー  すこしでもつたえたくてー  痛む心が  どんな 経験しても  やっぱり迷うのよ  この世であなたのあーいーをー  手にーいれるもーの  ……  …………    あぶない  フルコーラスいくところでした  エッセイで  はい、戻ります。  また歌いだしたら  「木緑っ! エッセイでしょが!」  と、叱ってください(⁠・⁠∀⁠・⁠)  はい  なんでしたっけ?  あ、そうそう。  そんな椎名林檎似の中城さん。  ほんとに綺麗で色気ありすぎでした。  そんな中城さんにわたくし、聞きました。 「中城さんて謎の人ですよね。どんな人タイプなんですか?」  暇な時間に思いきって踏み込みましたよ。  中城さんは唇にはりついた前髪を耳にかけながら、 「……うーん、なんだろ。なんか、売れないけど夢見て俳優とか音楽とかやってたりする人……とか」    バイトから帰ったのは深夜の2時でした。  ソッコーでTVブロスを手に取りました。  書類選考受付の期限……  間に合うでねがっ!  わたくし、深夜2時半に中川に電話しました。 「…………ん、んあ。……おう、山城。どした?」  中川は寝てました。 「寝てる場合じゃない、中川!」  まるで鬼。 「ど、どしたん? なんかあったか」 「写真撮ってくれ」 「………………写真?」  散々わたくしに振り回されてきた中川。警戒モード発動です。 「俳優に……俺は俳優になる! 俳優王に俺はなる!!」 「寝るわ」 「寝るな!」  電話は切られました。  翌日、わたくし山城木緑、俳優王になるために動き始めました。 1巻おしまい
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