俳優王に俺はなる! 最終巻

1/1
前へ
/30ページ
次へ

俳優王に俺はなる! 最終巻

 ジェロ全データ  海雪 最高位4位  えいさ 最高位18位  やんちゃ道 最高位39位  爪痕 最高位35位  嘘泣き 最高位47位  ただ……涙 最高位67位  夜明けの風 最高位67位  セレナーデ 最高位89位  なきむし倶楽部 最高位63位  ポロポロ 最高位171位  うぬぼれ 最高位131位  だそうです。  もはや「海雪」以降ひとつも知りませんでした。すこし盛り返した『なきむし倶楽部』が気になって仕方ないです。  みなさま、ひとつ勉強になりましたね!  さてさて、  まったく意味のなかった第2巻を挟み、ついに最終巻となります。    是枝裕和監督の『ワンダフルライフ』のオーディションを受けることになったわたくし。  まったく意味のなかった第2巻は飛ばしまして、ついに写真撮影です。  テレビブロスを真剣に読むわたくし。  全身が写るスナップ写真が必要とのこと。  ふむふむ。  スナップ写真か。  ほうほう。 「おいっ、中川っ」←おいっ鬼太郎っ と同じイントネーション。 「……なんや」  寝不足の中川、不機嫌です。  スーパードライを飲ませればすぐに治るのでわたくしは平気です。 「スナップ写真ってなんやっけ?」 「普段の写真とか、そんなやつなんちゃうん?」 「こんなビール飲んでプレステしてる写真とか?」 「オーディションなめてんのか、お前は」 「なめてないっ!」 「もういい、もういい、お前は疲れる。とりあえずどっか外で全身撮ればいいやろ」  ということで、中川ととりあえず外に出ました。  どこかで全身の写真と言われても、いったいどこで撮るのが正解なのやら。 「金閣寺で撮る?」  わたくしの住んでいた家は徒歩3分で金閣寺という立地でした。 「観光写真やんけ。ええんかな、そんなんで」  うーーーーん。  わたくしと中川、スナップ写真という難敵に悩まされます。  ちなみにたった今、大学では普通に講義が行われている時間です。 「そこらで撮ろう」  中川が言いました。その目にはさっさと終わらせたいという意欲が見てとれました。 「そうしよう!」  張本人も飽き始めている始末。  マンションの目の前の月極駐車場で撮ることになりました。もうやっつけです。  月極駐車場で普通に気をつけしたり、ポケットに手を組んだり、避暑地に来たおばさまのポーズだったり、とりあえずパシャパシャと撮りました。  うーーーーーん。  なんとも手応えがありません。  そもそもべつにかっこよくもないし(←じゃあオーディション受けるなよ) 「なあ、なんか、インパクトないし、ここに炊飯器持ってきて、ここで飯食ってる写真にしよう」  いつものわたくしによるぶっ飛んだ閃きに、中川はどーでもいいから早く終わらせようと、すぐ頷いてくれました。  かくして、月極駐車場に炊飯器を持ってきたわたくし、しゃもじでそのまま白飯を食らいます。 「撮ってくれ、中川」 「お……おう」  ぱしゃ  ぱしゃ 「どう?」 「……未体験すぎて、どうもこうもない」  中川の適切な感想が月極駐車場に響き渡りました。  えーい、なんとでもなれ!  何を書いたかも忘れた書類とともに、月極駐車場で白飯をしゃもじでかきこむ留年確実大学生のスナップ写真を入れ、応募しました。 「映画監督ってぶっとんでるからこんくらいがちょうどいいやろ」(←是枝監督ごめんなさい)  一週間も経ったら、わたくしは応募したことすら忘れていました。  二週間経ち、一ヶ月ほど経ち、お昼まで寝ていたときのことでした。 「なんか届いとるぞ」  勝手に家に入ってゲームしていた寸田地獄が、勝手に郵便物を漁って私に手渡しました。縄文時代なみにプライバシーがありません。 「……ん……うーん」 「どうしたん?」 「なんでもない」  むちゃんこドキドキ。  恋のはじまりの6倍くらいドキドキしました。  一次オーディション通知  こ、これは  寸田地獄に知られるとややこしい。  俺は有名な俳優になってしまう。  こいつは有名俳優となる俺に金をせびりに来るだろう。  一次オーディションの通知を見た時点で、わたくしはもう俳優気分でした。 「寸田、帰れ」 「はぁ? なんで? 彼女来る日やっけ?」  鼻をほじりながら答える寸田地獄。  あわれ、庶民め。 「俺とお前では住む世界が違う。さらばだ」 「頭おかしなったんか。カラオケ行こうぜ!」 「ふふ、寸田。名前だけ覚えておいてやる」 「こいつヤバっ。なんか突然頭おかしなった。やばっ」  何を言ってもわたくしには聞こえません。映画俳優とフリーターでは交われないのです。  わたくしは、突然友人たちにたいして下僕のように振る舞い、コッソリと東京へオーディションを受けに行きました。  さらばだ、寸田地獄、中川、テツ、佐伯。みんな名前だけは覚えておいてやる。俺は俳優王になり、広末涼子とかそのへんと付き合うことになる。  当日、ド緊張したわたくしは、おそらく是枝監督(あのとき、誰が誰なのか分かりませんでした)からの質問にズレた回答を繰り返し、その後なんの連絡もありませんでした(⁠・⁠∀⁠・⁠) 「寸田ー、カラオケ行こうぜー」 「お前最近うっとおしかったから行かねえ」 「えーーー、行こうぜぇ」 「うるせー、頭おかしいやつ」 「じゃあボーリング行こうぜー」 「おう、行こうぜー」  わたくしは通常運転に戻り、この数年後、普通に留年するのでした。  あ、そうそう。  ちなみにそのオーディション勝ち抜いたのは伊勢谷友介さんでした。  勝てるかぁ。 完 2023.7.4 19:23 今から札幌を発ちます。高所恐怖症のわたくしは、飛行機で2時間、歯を食いしばることになります。おーこわ。 さらば、北海道。寿司美味かった!
/30ページ

最初のコメントを投稿しよう!

41人が本棚に入れています
本棚に追加