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三戦目DRAW。
四戦目DRAW。
五戦目DRAW。
結局十戦して全てDRAW。タイムは全て0.001秒だった。
「今回のエキシビジョンマッチは引き分けです! 」
全く勝負がつかないために運営は引き分けと判定した。
山田直也が、ふぅと息を吐いた。
「驚いたよ。僕と並んじゃうなんてさ。ずっと孤独な努力をしてきたから絶対負けないと思ってたんだけどな」
「あなたは負けていません。そして僕も勝っていません」
山田直也は、フッと吹き出した。
「違いないや。また来年、対戦してくれるかい? つまりは来年も優勝しろよってことなんだけど」
「もちろん、そのつもりです。僕だって孤独な努力をしてここにいるんです。僕も殿堂入りします」
「ふふ。君とは友達になれそうだ。たった0.001秒で勝敗ついちゃう世界で登り詰めた仲間として。遅くなったけど優勝おめでとう! 心から祝福するよ! 」
翌日。将斗はメディアからのインタビューに答え、その名を世界に知らしめた。e-Sportsの世界で頂点に君臨する二人の日本人の一人として。
学校でも将斗に声をかける人がチラチラと現れてきた。
だが、将斗が一変した暮らしの中で楽しみにしているのは毎晩『オンライン早撃ち』の対戦をすることに変わりはない。その対戦相手に毎日山田直也がいて、お互いに0.001秒を維持している。
直接会ったことのない友人との0.001秒の交流は絶えることはない。
了
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