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「……ッ、は」
夢を見て飛び起きるといつも呼吸が荒かった。息が苦しくて、ベッドの上に起き上がって心臓に手のひらを当てる。どくん、どくん。心臓が脈を打っている。
ゆっくりと深呼吸を繰り返した。大丈夫、俺は織田信長なんかじゃない。
なんかじゃ、ない、けど。
確かに俺の中には、織田信長の俺がいる。懸命にあの世界を治めようとすべてを犠牲にしてはたらいてきた俺がいるんだ。
ふと、頬に違和感を覚えて指を滑らせれば、指先には僅かな感情の雫が灯った。湿ったそれは、すぐに乾いて消えてしまう。
願わくば。
次の世も光秀と出逢えますように。
俺は頭のどこかで気がついていた。その願いを果たさない限り、俺は永遠にこの夢に苦しめられるって。
でもさ、神様ってのは意地悪で。光秀が何処にいるのかも分からないんだ。
だからきっと、俺は死ぬまでこの夢に苦しめられて、心を揺らして生きていくんだって、そう思っていた。
思って、いたのに。
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