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だから、“FARAWAY FRIENDS”を歌いたくなかった。
二〇二一年、二月十四日、午後三時。東京都秋葉原。
二人組アイドルユニット、“はーとのパッケージ”(通称、はとパケ)のメンバー、千田サヤカは開場の二時間前のこの時間に、ライブハウス秋葉原NESTの楽屋口を叩いた。
ドアが中から開けられる。現れたの中年の男は、このライブハウスの支配人だ。
「よろしくお願いします」
「よろしく。無事にバレンタインライブ開催できて良かったね」
「本当に、ぎりぎりまで不安でした」
マスクの内側で苦笑いを浮かべるサヤカ。
“無事に”とはいうものの、昨年の二月から流行し始めた新型コロナウイルスの影響で、秋葉原NESTには、キャパの半分である百二十人までしか観客を入れることができない。一月七日に再度発令された緊急事態宣言の影響で、午後八時を超えての営業もできない。
きっと、支配人もマスクの内側では苦い顔をしている。そう考えてしまわざるを得ない現状だ。
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