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「あの曲って、あれから一回も披露してないじゃん」
「ごめん、びっくりさせて。ほら、今日、チケットを取りたくても取れなくて、仕方なく配信ライブのチケットを買った人もいっぱいいるみたいで。そういう人に響く曲だと思うから」
嫌いな曲ではない。けれど、歌いたくはなかった。
ルリと一緒に初めて作詞に挑戦した曲だから、愛着がないわけではない。必ずお菓子を連想させる言葉を入れるという、それまでのルールも無視している上に、サウンドの雰囲気も異質。振り付けも入っていない。さまざまな理由で、エリナの卒業公演最終部のシークレットステージで披露されてからは、封印状態にある曲だ。それをまた歌うなんて、思ってもみなかったことで、少し怖くもあった。
神代が音響スタッフとして会場にいるので、セットリストに融通が効くとはいえ、直前のタイミングで申し出たところで受け入れてもらえるのか。ルリの提案が却下されれば、歌わずに済むかもしれない。とも思いかけたところで、神代から快諾された。
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