だから、“FARAWAY FRIENDS”を歌いたくなかった。

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 そして、いよいよ、ワンマンライブが開演となった。SEが会場に流れるとともに、フロアにクラップが響き始める。感染者を出さないため声に出せずに心の中に秘めた歓声が、伝わってくるようだ。去年と比べると、観客の入りは疎らではある。それでも熱量は変わらない。 「皆さん今日は、本当に来ていただいてありがとうございます。私たち、“はーとのパッケージ”は、毎年バレンタインに、ここ、秋葉原NESTでワンマンライブを行ってきました。去年は最大キャパの二百三十人も少し上回って、本当にみっちりでライブをやりました。今年はそれが叶わなくて、残念な気持ちもあるんですけど、さっき配信の視聴人数を見ていたら、百八十六人も見てくれていました。今ここにいる人数と足したら、過去最大の規模です。――これほど嬉しいことは、ありません。  だから、今、ここにはいないファンの方々に向けても感謝を届けるために、ルリと一緒に初めて作詞した歌を歌います」  曲紹介で楽曲を察した観衆が、一瞬どよめいた後に、気まずそうに声を抑える。 「FARAWAY FRIENDS」   “遠く遠くに離れていても  たとえその笑顔 見えない場所でも  いつもいつでも祈っているよ  君が笑える世界になりるように  初めて一緒に笑ったこと  初めて一緒に泣いたこと  傍にいればそれだけでほら  物語みたいに綺麗に思えたね  ずっとずっと同じ時間(とき)を  重ねていけると思っていた  人それぞれに人生(みち)があるよ  そんな当たり前忘れてしまってた    遠く遠くに離れていても  たとえその笑顔 見えない場所でも  いつもいつでも祈っているよ  君が笑える世界になりるように  いつかまたね 分かれ道が  一瞬交わる交差点  もし会えたなら手を振り叫ぼう  だって君のこと忘れはしないから”
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