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間奏のギターソロが入ったところで、サヤカは、泣きそうになった。目が潤んでいるのが見えてしまっていたかもしれない。歌唱だけは、涙声にならないようにしたかったけど、続くルリの落ちサビで、ついに堪えきれなくなってしまった。
終演後の物販では、何とか元気に笑えるようになった。ファンの人からも「もう聞けないと思っていた曲が聞けて、嬉しかった」と温かい言葉を貰った。
それでも、曲中に一滴だけ涙を流してしまったことは、悔しかった。あのときの歌は、「エリカがいなくて寂しい」だとか、そんな気持ちで歌ったものではないのに。
「サヤカ、どうしたの?」
楽屋のソファで俯いていたところで、ルリに声をかけられた。
「いや、泣くつもりじゃなかったのにって」
「サヤカは真面目だね」
「真面目で何が悪いの」
「悪くないけど。気負わなくていいって言ってるの」
俯いたままのサヤカの眼前に、ルリのスマートフォンが突き出された。画面には、SNSでライブの感想を検索した結果が映し出されていた。所謂、エゴサーチ、略してエゴサというものだ。
どれも称賛の声だった。その中に、見覚えのある顔を発見してしまう。最初は思い違いだと思った。ファンが、メンバーの写真を拝借してアカウント画像にするなんてよくある話だから。でも文面を見て、思い違いではないと確信する。
“今日、はとパケのライブを見た。なんか上から目線だけど、二人ともすっごく成長していた。もう私は、あんなに歌って踊ったりはできないな。フリ忘れたしw
またFARAWAY FRIENDSをやってくれるとは思わなかった。最初聞いたときも思ったけど、本当にいい曲。むしろステージから降りたときの方が、響いたかもしれない。ちょっと、もらい泣きしちゃった。やっぱりいいライブするわ、はとパケ。
落ち着いたら、また生でライブが見たいなあ。もちろんメンバーには内緒だけど。はぁー、資格の勉強頑張ろ٩( ᐛ )و”
何か反応を残そうか、とも思ったが、そっと心の中に留めておくことにした。
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