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「あんた…なんでそんなに泣くの?」
「うぅ…あ、あなたこそ…つ、辛くないのですか……?」
「…え?」
「こ、こんな事になるなんて…私、思いもしなかったか…ら……」
「こんな事…ね」
忘れてしまった気持ちだ。
いや、私だけじゃない。
同室にいたあの犬も。
周りの檻にいる犬達も…みんな、少なくとも一回は思った事だろう。
だけど……。
「そんな事思っても仕方ないじゃない…」
「なんでですか…!?」
「五月蝿いわね…願っても祈っても現実は変わらないからよ……」
「あ、諦めたんですか……?」
初めは私だって…願い、祈り、良い子でいるから許して…って思った。
けど、そんなの幾ら思ったからといって変わるモノではない。
諦める、諦めたではなく…自身ではどうにか出来るレベルではないのだ……。
「どうだっていいでしょ…とりあえずあなた、静かにして…周りの犬も迷惑してるのよ」
「…分かりません」
「……え?」
「分かりませんっ!何がどうだっていいんですか……?良いわけないじゃないですかっ!」
何なのこいつ。
ムカつく…こっちの気も知らないで……何なのこいつ……こいつ……!
「私は絶対…諦めない。諦めない……」
「…勝手にしなよ。とりあえず静かにしてくれたら私はどうでもいいわ」
「…諦めるもんか…諦めない……」
その日から、そのトイプードルはブツブツと呟き始めた……。
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