2 点火直前

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2 点火直前

 いよいよ売り場内商品陳列する前夜、シートで催事内が売り場から見えないようにする。更に、お客様へのお詫びシートも貼り大きなものから排出入が始まった。  もうシート内は戦地だ。どうしても大きなものを排出入するときは大きな音も出るし、指示の声なども大きくなるため夜中の作業になる。  空調が半ば止まった状態での作業。この日だけは私もいつものスーツからジーンズにTシャツと動ける服装をロッカーに持ち込んで着替えてから挑む。  陳列棚などの設置が終わると、次から次に段ボールが運び込まれる。それもレイアウトがあるのでその辺に置いていけば良いものではない。その指示をしながら不都合や不具合が出てしまう部分のとその場で変更していかないといけないし、少しの油断が怪我につながるので気が抜けない。    その時、ものすごい音と共に誰かの大声が響き渡った。  「チーフ!こっち来てください!!」  ハッとしてすぐに駆けつけると棚が1つ倒れていた、その横では腕を押さえている男性社員の神保くん。    「神保くん!大丈夫??何があったの??」  「神保大丈夫かっ?!」  私と現場助っ人で来ていた直也が同時に駆けつけた。  どうやら棚の車輪一つが外れて思わず手を出したら床に置いてあった機材に躓き、棚を押し倒してしまったようだ。  「すいません。オレの不注意です。ここなら大丈夫だろうって機材置いたのもオレだし」  しゅんとしてしまった神保君には悪いが、その通り。初めての催事でも初めての搬入作業でもないのにちょっとした油断。そのちょっとした油断が怪我に繋がるから始まる前に気を引き締めるように言っていたんだけどね。  「とりあえず見せて」と神保君の腕を見てみると少し腫れているけど折れてはいないみたいでほっとした。  「神保君、あなたは今日はもう帰ってゆっくり休みなさい…… と言ってももう終電ないけど、タクシーで帰れる?その前に何かで冷やした方が良いわね」  いつの間にか側にいなくなっていた直也が氷の入った袋を差し出してきた。  「課長ありがとうございます」  「あぁ。神保、こっち来い」  直也が神保君を連れて邪魔にならない場所に座らせアイシングしてくれている。  その間に、他の人に手伝ってもらってその棚を撤去し、機材を片付ける。  棚一個どっかから調達出来ないかな・・・。
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