プロローグ

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「まりん殿も仕度が整ったようであれば、そろそろ出かけるとしよう。この先は、いよいよ王宮の町、エルダードに出ることになる。皆もそのつもりで、気を引き締めて」  レーソスの言葉に、エーディンとダクタは「はい!」「もちろんです!」と、緊張感を高めた顔で、力強く答えた。そして、まりんは。  ついさっきまで、まりんはこぼれ落ちそうな涙を必死にこらえていたのだが、レーソスの「まりん殿」という呼び方を聞いて、とうとうこらえきれずに涙ぐんでしまった。……ああ、レーソスさん。なんて心に響く、そして優しい声なんだろう。聞いただけで、勇気付けてくれる言葉なんだろう。ほんとに凄い人だ、レーソスさんて……!  そんな感慨に浸りきっていたまりんは、これから王宮の町へ乗り込むという「実感」を改めてヒシヒシと感じ、ムラムラとやる気が湧き上がってきた。 「もー、やるわよ、やっちゃうわよ?! ここまで来たら! やらずにいられますか!!」  それまで黙っていたまりんの、思わぬ「やる気発言」を聞いて、レーソスたちは、更にニコニコと微笑んだ。少し顔がツヤツヤになって、新しい物入れの袋を持ち。更に元気を増したようなまりんの姿は、何より皆を元気付けるものだった。 「まあまあまりんちゃん、落ち着いて落ち着いて……」  ふんぬー! と鼻息も荒く意気込むまりんへの、エーディンの苦笑まじりの言葉も、今のまりんには聞こえていないようだった。  
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