再来の熱砂(7)終結

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再来の熱砂(7)終結

「遅かったな」  湊は、背後を見ずに言った。 「悪かったよカナリア。今度何かおごるからさあ」  オシリスが飄々と言い、岩山の反対側からはスナイパーライフルを下げたストライクが姿を現した。そしてオシリスと一緒に、川口と山本も現れた。 「ん?」  湊が首を傾けると、川口が首を掻きながら言った。 「居所はわかったんだけど、な」  オシリスは笑う。 「こっちはいつでもやれたんだけど、居所がつかめなくてな」  山本がムッツリと補足するように言った。 「この辺にいる事はわかってたが、奴らの本拠地に突っ込むのは、成功率が低すぎた。そうしたら、こいつらに声をかけられて、今回限り、非公式に手を組む事に――違うな。たまたま俺達は、お前につけた発信機の信号を追ってここに来たら、こいつらが付いて来た。それで、どうしようかと考えているうちに、赤龍のリーダーを射殺した。そういう事だな」  オシリスは苦笑し、ストライクは溜め息をついた。 「面倒臭いなあ、お役人は」  オシリスの言い草に、湊は吹き出した。  そして、額に穴を開けて倒れるシェンの瞼を閉じておく。 「子供達は無事に街に着いたんですか」 「ああ。夜明けに砂漠で火柱が上がっただろう。あれを確認しに行くかどうかもめていた所に来て、それで、軍が乗り込んで行った」  山本の答えに、湊はほっとした。 「な?発信機も役に立つだろう?」  川口が片目をつぶって言うのに、オシリスも湊も、思わず笑い出した。  日本に帰って、一週間。  念の為の検査だとか警察や政府の事情聴取だとかが済み、ようやく日常に復帰だ。 「湊は何か変なのに気に入られるなあ」  涼真は失礼な事を言う。 「これが『類は友を呼ぶ』ですかね」  悠花は感心しつつ、更に失礼な事を言う。 「しれっと毎回無事に帰ってくるあたり、湊君も変だという事かしらね」  雅美も笑顔でとどめを刺しに来る。 「何か、酷い」  ムスッとして言う湊に、涼真達はやいやいと言い募った。 「酷くない。酷いのはお前だ」 「そうですよう。もっと早く連絡くれれば良かったのに。心配したんですよう」 「ヘリに乗らずに済ませる方法とか、相談しようとも思わなかったんですか」 「これだけ心配したっていうのに、お土産はないんですか」 「メールに返事もない!」  たじたじとなる湊と囲んで文句を言いながら無事を喜ぶメンバーに、錦織と柳内は目を細める。 「湊君が戻って来た時、こんな風に言い合いをできる仲間ができるなんて諦めてたよ」 「あの頃は、日常生活に戻れるのかも疑いましたよ、私は」  笑って、パンパンと手を叩く。 「はいはい。もうその辺で。今日も依頼が来てますよ。  ええっと。今日の午前中は庶務課の手伝いで倉庫の整理。午後からは会社見学に来る学生の誘導ですね」  それで湊達は、しゃきっとして、部屋を出て行く。  3階に上がり、チラリと窓の外を見ると、青い空が広がっていた。  砂漠の空とは色が違うように感じる。 (お前も、視点を変えてみれば良かったんじゃないか。どこにいても、つまらない物も楽しい物もある。そこから何を見るかは、個人の自由だ) 「行くぞ、湊」 「おう」 (俺は、ここで生きていく)  湊は足を踏み出した。  
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