第1章

2/2
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/2ページ
第1話 憧れの…? ??年??月??日-??時??分- 僕は死んだ。いや、死んだはずだ。 なぜこうもあやふやな言い方をしているかというと僕の目の前に広がる景色が信じられないからだ。 確かに僕は地面に叩きつけられて意識を失った。なのに今こうして生きている。 見たところ、でかいお城の広間のような場所で僕は魔法陣の真ん中に座り込んでいる。 目の前には王様の格好をした人と西洋風の甲冑を着た人達が並んでいた。 「ここはどこ…?僕は自殺してもう死んだはずじゃ…?」 「驚くのも無理はない。 落ち着いて聞いてほしい、異世界の勇者よ。 私の名前はヴァン・リ・インペリム8世。ここインペリム王国現国王である。 まあここはお主からしたら簡単に言えば異世界ってことだ。 我々はこの国を救うために禁忌とされている異世界からの召喚の儀式を行ったのだ。 まずは名前を聞かせてはもらえないだろうか。」 王様はそう言った。 僕は驚きを隠せなかった。まさか本当に異世界召喚されるなど思ってもみなかったからだ。それに勇者だなんて。 嬉しさよりも驚きが大きくて何も考えられない。 「ゆずる… 天王寺結弦です。 聞きたいことは山ほどあります。 もちろん説明してくれるんですよね…?」 僕は嬉しさや不安など色んな感情が入混ざって1周回ってワクワクしている。 そんな事実に自分でもびっくりしていた。 「もちろんだ。これまでのことやこれからのことを全て話そう。 だが今日はもう遅い。 気持ちの整理がつかないだろう。 明日ちゃんと話す場を儲けるから今日は城でゆっくり休んでくれ。 ちゃんと勇者の部屋も用意してあるのでな。」 「分かりました。その部屋まで案内お願いします。」 「こちらへどうぞ。」 そう言って現れたのは黒髪ロングの清楚系なメイドさんだった。 「綺麗な人…」 思わず口に出してしまった。 「何か言いましたか?」 「いえ!なんでもないです!はは…」 聞こえてなかったみたいだ。 よかった…。 こっちに来る前は女性経験なんて1ミリもないどころかあまりいい思い出が無いだけに緊張してしまう。 そんな会話をしてるうちに用意された部屋に着いた。 「明日の朝にまた迎えに来ますのでそれまでこちらでお休みになられてください。」 そう言って出ていこうとするメイドさん。 「あの!案内ありがとうございました!」 「お礼を言われるようなことは何も。これが仕事ですので。」 眉一つ動かさないで淡々とメイドさんは言う。 「まあそうですね… ちなみに名前とか聞いてもいいですか…?」 「秘密です。」 え、悲しい、女性に名前を秘密にされるとかそんなに僕信用ないの… 「ふふっ、冗談ですよ。 私の名前はクリス。 気軽にクリスって呼んでください。」 「クリスさんですね、了解です。」 彼女の笑った顔に一目惚れしそうになったけどそれは僕が女性経験全くないからである。 「ではこれで失礼しますね。ユズル様おやすみなさい。」 「クリスさんおやすみなさい。」 こうして僕は部屋で1人になる。 召喚前では当たり前だったのに少し寂しい思いをするのはクリスさんのせいなのかな。 「誰かとこんなに話したのは久々な気がする。少し話しただけなのに楽しかったなぁ…」 召喚前の記憶が蘇る。 もう二度と地球には戻りたくない。 あんな地獄に戻るくらいならこの世界で生きよう。 「おやすみなさい。」 この時の僕はまだ何も知らなかった。 この世界を崩壊させるのが僕だということを。
/2ページ

最初のコメントを投稿しよう!