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「でしょ? 深呼吸したら、最後に胸に手を当てて目を閉じることがポイントだよ」
「深呼吸して、最後に胸に手を当てて目を閉じるね」
そう言って、私が自分の胸に手を当てていると、時夢くんはこんな風に私をからかった。
「そう、岬ちゃんの小さな胸に手を当ててね……」
「えっ? もう~、小さな胸っていうのは、余分でしょー!」
「あー、ごめん、ごめん。言い過ぎちゃった、はははは……」
「もう~、時夢くんのバカ~!」
私は膨れっ面で、時夢くんの胸を数回軽く叩く。
でも、彼は何故だかすごく楽しそう。
それは、私も同じ……。
からかわれても、全然嫌な気持ちにならない。
むしろ、そうすることで、時夢くんがまた少しずつ近くに感じる。
「あははは、でも、こうしたら、絶対にリラックスしてプレー出来ると思うよ。明日からやってみて」
「う、うん……、分かった。明日からやってみる……」
そういえば、彼がどんな部活をやっているかまだ知らない。
こんなに背が高くて、私を自転車の後ろに乗せたままあの急坂を登りきる体力があるくらいだから、何かスポーツをしているに違いない。
そこで、私は彼に、部活は何をやっているかを思い切って聞いてみた。
「と、ところで、時夢くんは、部活何やってるの?」
「僕も実は、テニスをやってるんだ」
私と同じテニス……?
「えっ? そうなの?」
「うん。ほら、テニス部ってさ、女の子たちはみんなテニスウェアがヒラヒラしてかわいいでしょ?」
「えっ? だから、テニスやってるの? 時夢くん?」
「そう。それもある」
ま、まさか時夢くんがそんな理由でテニスを……?
「じゃ、じゃあ、さっき女の子たちのテニスしているところを、いやらしい目で見てたの!?」
「そうだよ」
そうだよって、あっさり素直に認めちゃった……。
「もう~、ダメなんだからね~、そういうの!」
「でも、僕の見ていたのは、岬ちゃんのかわいいテニス姿だけだよ」
「えっ? 私だけ?」
そんなこと、突然言われたら戸惑っちゃうじゃない……。
「そう、岬ちゃんだけだよ。僕の興味のあるのは」
「そ、それは嬉しいけど、で、でも、後ろから私のテニス姿いやらしい目で見てたの?」
「そうだよ」
「そうだよって、もう~、ダメなんだから~。そういうのは!」
「あははは、かわいかったよ。岬ちゃん」
その時、時夢くんにそんな風に言われて、私の顔は一気に赤くなったと思う。
「エッチな目で見ちゃダメなんだからね~」
「あははは、ごめん、ごめん。岬ちゃん家の庭で少し僕が教えてあげるよ」
時夢くんが、こんなにエッチだったなんて思わなかった。
私をそんな風に見ていたなんて……。
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