63人が本棚に入れています
本棚に追加
そんなエッチな動機でやっているテニスで、私に本当に教えられるのかしら。
疑わしい……。
「そんなことばっかり言ってて、本当に時夢くん、教えられるの?」
「大丈夫だと思うよ。僕、全国大会に行ったことあるから、少しくらいは岬ちゃんに教えられると思うよ」
「えっ? 全国大会に出たの?」
「うん。僕もちょっとだけ、テニスは出来るんだ」
「出来るって、全国大会に行けるほどって、すごく上手だってことだよね?」
「そうでもないけど、ただ、岬ちゃんレベルだったら、少しは教えられるかな?」
「もう~、岬レベルっていうのは余分でしょ!」
「あははは、ごめん。言い過ぎた。将来の全国大会のテニスプレーヤーだもんね」
「岬、時夢くんがビックリするほど、うまくなってやるんだから」
「うん、期待しているよ。岬ちゃん」
「絶対うまくなってやるんだからね~」
私たちはその日、日が暮れるまで、時夢くんに家の庭でテニスの基本を教わりながら練習した。
部活の先生や、先輩たちよりも、やっぱり全国大会に出たことがあるだけあって、すごく教え方も上手で、理に適った分かりやすい説明を丁寧にしてくれる。
時夢くんがテニスラケットを振っている姿に、またしても私は胸が『キュン』としてしまっていた。
やさしい彼が、真剣にラケットを振る姿は、本当にかっこよくて、うっとりしてしまう。
どうして、こんなにテニスがうまくて、背が高く甘いマスクをした男性が、私のことをここまでしてくれるのか、改めて不思議としか思えなかった。
でも、その日の空は、今の私の気持ちをそのまま表しているかのように、星たちがきれいに輝き、私たちの未来を明るく照らしているかのように見えたんだ。
最初のコメントを投稿しよう!