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『キキーッ!!』
「岬ちゃん、学校着いたよ」
「ありがとう、時夢くん」
私が自転車の後部座席から降りると、時夢くんが突然こんなことを聞いてきた。
「岬ちゃん、今日部活何時に終わるの?」
「今日は、12時に終わる」
「じゃあ、12時なったら、また迎えに来るね」
「ありがとう、時夢くん」
「お昼ご飯食べた後、何か用事ある?」
「えっ? べ、別にその後は特に用事はないけど……」
「じゃあさ、面白い場所があるのを見つけたから、一緒にそこに行かない?」
「えっ? (こ、これって、まさか、デ、デートのお誘いかな……?)」
私が口元に手をやりながら、モジモジしていると、彼が胸ポケットから何やら紙切れを2枚取り出し、ヒラヒラさせる。
「丁度、このチケットが2枚あるから、岬ちゃん、どうかなって思って」
「い、い、行きます……! (やったぁーっ! やっぱりデートだーっ!)」
彼は自転車を私に手渡すと、やさしい笑顔で手を振りながらこう言う。
「よかった。じゃあ、また12時に迎えに来るね。それじゃあ」
「うん、バイバイ……、時夢くん……」
私はしばらく呆然としていた。
男の人から今まで、そんなお誘いを受けたことがなかったから、体に力が入らなくなっちゃった……。
彼の走り去る後姿を見ながら、私は力なく、手を振っていた。
「ふにゃふにゃふにゃ……、ウソら……、これって、夢なんらね……。ふにゃふにゃふにゃ~……」
『キキーッ!』
そこへ加奈が到着すると、私の顔を見てビックリした様子。
「岬、どうしたの? 何か顔にしまりがないんだけど……」
「あぁ、加奈……、れんきらったぁ~……」
「な、何言ってんだか全然分からないんだけど……」
「ふにゃふにゃふにゃ~……」
「何があった? 一体……」
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