【 第六話: 岬を助けて! 】

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 私は、校門の壁に背を向けた状態でしゃがみ込み、膝を抱えて泣いていた。  ――すると、どこからか彼の声が聞こえてくる。 「……岬ちゃん」 「えっ? 時夢くん……? どこ……?」  私は周りをキョロキョロと見渡す。 「岬ちゃん、ここだよ」 「えっ? どこなの? 時夢くん……」  周りを見ても、彼の姿はどこにも見当たらない。 「だから、すぐ上にいるよ」 「えっ?」  私が振り返って上を見ると、時夢くんは、校門の上にちょこんと座って、私を見つめていた。 「た、時夢くん……」 「あはは、岬ちゃんは視野が狭いな。それじゃ、サーブも打ち返せないよ」 「う……、う、う、うわぁ~ん!」  時夢くんは、校門の上から飛び降りて、泣いている私に駆け寄ると、私の頭をやさしく撫でた。 「時夢くんのバカ~、うわぁ~ん……」  私は時夢くんの胸の中へ飛び込んで、思いっきり甘えて泣いた。 「ごめん、ごめん……」 「ううぅぅ……、私、心配したんだから~……」 「ごめんよ、岬ちゃん」 「ずっと、この上にいたの~?」 「うん、ずっと、ここの上にいた。岬ちゃんの慌てる姿、ずっと上から見てた」 「時夢くんのいじわる~。うわぁ~ん……」 「ごめんよ、まさかここまで気付かないとは思わなかったからさ」 「ううぅ~ん……」  私は彼のシャツを握り締めて、顔を胸に埋めて涙していた。  彼がこのままどっかに行っちゃう気がしたから……。  彼は私の方を見ると、頬に流れた涙をやさしく指で拭ってくれた。  そして、私を抱き寄せると、彼の大きな胸と長い腕でギュッと抱きしめてくれた。  彼は私の髪を撫でながら、やさしくこう言ってくれる。 「大丈夫、岬ちゃん。僕はどこへも行かないよ」 「ありがとう、時夢くん……」  私は彼の背中に手を回して、彼の大きな胸に顔を埋めた。 「うわっ! み、岬……、時夢くん……」 「やあ、加奈ちゃん」 「あっ、加奈……」  私は慌てて涙を拭いながら、時夢くんから咄嗟に離れた。 「お、お取り込み中のようですね……。私、先帰るね……、じゃあね……」 「加奈ちゃん、バイバイ」 「か、加奈……、またね……」  加奈に恥ずかしそうに手を振る。  さすがに、親友の加奈に、時夢くんとくっついているところを見られちゃうと恥ずかしい……。  加奈は多分、私たちが恋人とでも、勘違いしてしまったんじゃないかって思う。 「見られちゃったね。加奈ちゃんに」 「う、うん……」  私は右手の人差し指を咥えながら、赤くなった顔を内輪代わりにした左手で、一生懸命に扇いで冷ましていた。
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