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すると、外から彼の呼ぶ声がしてきた。
「岬ちゃーん」
(あっ、もう、時夢くん来ちゃった! やばいっ!)
「あれっ? 岬、何か背の高い男の子が、岬のことを呼んでるわよ」
「あ、ママ、大勢で、クラスのみんなで、どこか行こうっていうことになってるんだ……」
「そうなの? 帰りは遅くなるの?」
「う、うん。ちょっとだけ、遅くなるかも……」
「そう、気をつけて行って来なさいよ」
「わ、分かった……。じゃあ、ママ行ってきま~す!」
私は着替える間もなく、制服のまま、彼の元へ行った。
幸いなことに、彼も制服のまま。
(あ、良かった……。時夢くんも制服のままだ……)
「じゃあ、岬ちゃん行こうか。また僕が自転車漕ぐから、岬ちゃんは後ろに乗って」
「う、うん!」
私は、どこへ連れて行ってくれるんだろうと思いながら、彼の背中にしがみ付いていた。
胸の『ドキドキ』が止まらない!
胸の鼓動の一つ一つが、彼に直接伝わっちゃうんじゃないかと思うほど、私は胸高鳴っていた。
『シャーーーーッ』
「と、ところで、時夢くん」
「なあに、岬ちゃん」
「こ、これからどこに行くの?」
「なんか、新しく出来たところみたいなんだけど、チケットが丁度2枚手に入ったから、岬ちゃんを誘ってみたんだ」
「そ、そうなんだ……。そこまでは遠いの?」
「学校よりかは遠いけど、飛ばしていくから30分くらいかな」
「そ、そう……」
「さあ、岬ちゃん。全速力で行くから、しっかり掴まって!」
「う、うん!」
振り落とされないように、彼にしっかりと密着出来るから、こういう状況はむしろ大歓迎だ。
私は彼の背中を抱きしめながら、ずっと笑顔が絶えなかった。
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