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【 第一話: 時を越えて 】
「岬ーっ! おはよう! 早くしないと学校に遅れちゃうよーっ!」
「分かったーっ! 加奈、ちょっと待っててーっ!」
これは私が中学2年生の時のお話。
「もう、いつも朝が遅いんだから、岬は!」
「ごめん、ごめん! 待たせちゃって」
その頃の私は、いわゆるデキの悪い中学生というやつで、全くできない勉強と全く上達しない部活に明け暮れる毎日を過ごしていた。
彼氏はいなかったが、近所の幼馴染の『加奈』とは長い付き合いで、馬が合ってとても仲がいい。
「今日は、特別遅いから、全力で坂突っ切るわよ!」
「うん、分かった!」
今日はいつもより特別寝坊をして、朝、家を出るのが遅くなってしまった。
「行くよ!」
「うん!」
――私たちは、二人とも田舎の山奥に住んでいる同級生で、いつも学校へ行く時は、山の上から街の中学まで、こうして自転車で二人で通っている。
でも、今日は私の寝坊でかなり遅れ気味。
私たちは、いつものように自転車に乗って、全力で山の上から『あの坂』を下っていたんだ。
「岬、ヤバイよ! 早くしないと学校の門、閉められちゃうよ」
「ごめん、加奈。昨日、夜遅くまでラジオ聞いてたら、朝寝坊しちゃった……」
「もう、岬は、朝が弱いんだから、早く寝なよね」
「ほんと、ごめん」
加奈は、ショートカットでボーイッシュな女の子。
それに、活発でいつも元気印。
私より頭が良く、スポーツもできる、いわゆる万能タイプの女の子だ。
「さあ、この坂、全力で下りていくわよ!」
「うん!」
「それーーっ!」
加奈を先頭に、いつものようにこの坂を下る。
私は加奈の後ろをいつも通り付いていく。
『シャーーッ!!』
「右カーブよ~!」
『キキーーッ』
山道は、とにかくカーブが多い。
「今度は、左カーブ~!」
『キキキーーッ』
「あ、あれっ!? 何か今日、ブレーキの効きが悪いな~っ!」
この日の私の自転車は、やけにブレーキが効きが悪くなっていた。
その時……。
「あっ!! 岬、前から車が来るから気をつけてね~っ!」
先頭を走っている加奈が思わず大声で叫ぶ。
『ギキギキ……』
「あ、あれっ!? ヤダ、ブレーキが効かない……!!」
加奈が私の方を振り返り、こう叫んだ。
「み、岬、危ない!!」
『キーーーーーーッ!!』
『ギキギキ……』
間に合わない……、ぶつかる……!!
「ああ!! きゃーーーーっ!!」
『ゴン!! ガン!! ガシャーーーーン!!』
「み、岬ーーーーっ!!」
「きゃあーーーーーーっ!!」
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