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7月14日(土)
秋平は畳の上にゴロンと横になった。あと1週間もすれば夏休みだ。7月中旬でもこの田舎ならまだうだるほどの暑さではない。開けてある窓から涼しい風が舞い込んできた。
今日は先週、時間をかけて街まで買いに行ったゲームをやるつもりだ。夏休みはこのゲーム三昧の予定を立てている。
秋平の家は農業をやっていて、秋頃から本格的な繁忙期に入る。それまでは秋平も手伝うことはない。16歳の今だからこそ遊んでやろうと意気込んでいたのに、そうもいかなかった。
ゲーム機の電源をつけた瞬間、さっと音を立てて秋平の部屋の襖が開いた。
「秋平!あんた土曜の昼からゴロゴロしよって!起きぃ!」
秋平は勢いよく起き上がった。「母ちゃん。びっくりした。部屋に入る前は声かけぇ言うてるやろが」
エプロン姿の母はいつもの甲高い声で、秋平を無視して話し出した。
「またゲームしよる。ヒマなやつやの」
「ヒマちゃうし。なんの用や?」
「離れの掃除するよって。あんたも手伝い。どうせヒマなんじゃろ」
だからヒマじゃないって、と秋平は言いかけたが、母にとってゲームというものはヒマな人間がやる物だと言う思い込みがあるようで、言い返しても無駄だと諦めた。こっちは真剣にやっているというのに。
「はぁ?なんで離れの掃除なんかせなあかんのや?」秋平は頭をポリポリと掻いた。
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