オンラインパーティー

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オンラインパーティー

「うわぁ。やっぱり利用者が多いんだなぁ」  未曾有の感染症が世界を襲った。ワクチンは開発されたものの、変異するタイプのウイルスのため、人類はウイルスと付き合って生きていくことを余儀なくされた。それによって、生活スタイルも文化も大きく変わった。そう。異性との出会い方も。  彼女や彼氏のいない人にとって、出会いの場は貴重だ。以前は合コンと称し、複数の男女が出会いを期待し集っていたが、今は違う。感染症のせいで壊滅した飲食業界。今じゃ外食する機会は滅多にない。だから、合コンも開けない。出会いの場がないってことだ。  そんな状況を打開すべく生まれたのが〈オンラインパーティー〉。  目的は男女の出会い。合コンとは違い、オンライン上で開催される。出会いを求める男女がランダムに集められ、オンラインでつながる。パソコンの画面上に、いくつもの男女の顔が並び、会話を楽しむ。それぞれに酒などを準備し、大勢で盛り上がる。 「池本裕也、28歳。印刷会社の営業マンやってます」  順番に回ってくる自己紹介を済ませたあとは、ほとんど口を開くことがなくなってしまった。はじめて参加する緊張感はもちろんあるが、そもそも大勢でひとつの会話を共有するのって、無理なんじゃね? 心の中でそう愚痴ったときだった。 『個別ルームに行きませんか?』  テキストのメッセージが飛び込んできた。それは、大勢いる女の子の中でも、特にタイプだと感じていた子からのものだった。 『ぜひ!』  僕は個別ルームへと移動した。  オンラインパーティーでは、開始早々こそ大勢で会話を共有するが、気に入った相手がいれば個別ルームへと移動し、参加者たちとは隔離されたスペースで会話することができる。二人きりになる男女もいれば、本来の合コンのように、男女の人数を合わせ、グループで楽しむ人たちもいる。  今回はどうやら、彼女と二人きりになれるみたいだ。 「清水加奈子って言います」彼女が名乗る。 「加奈子サン……よろしくお願いします!」  正直、めちゃくちゃかわいい。ビギナーズラックというやつだろうか。こんなにもタイプの子と個別ルームに行けるなんて。  緊張から会話に多少の沈黙はあったものの、彼女の明るい性格に引っ張られるように、徐々にリラックスした空気が流れていった。
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