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「脱毛サロンに通うの?」
「うん。まだ通ってないんだけど。気になるサロンがあってね」
彼女から、またしてもURLが送られてきた。予想はしていたものの、クリックしてみると、高級脱毛サロンのウェブサイトが表示された。
お決まりのパターンだ。きっと彼女は黙りはじめる。そして、モジモジしながら、僕が彼女にプレゼントするのを待つんだ。
「わかった! 加奈子サンにはキレイでいて欲しいから、脱毛サロンのコースをプレゼントするよ!」
またしても決済ボタンをクリックする。
オンラインで会う度に、彼女からプレゼントをねだられた。金品目的なんじゃないかと疑ってはみたが、彼女との会話は楽しかったし、二人の距離も縮まっている気はしている。ましてや、彼女と会えなくなるなんて、考えたくもなかった。
プレゼントを贈るだけの日々を卒業するために、勇気を振り絞って提案してみた。
「近いうち、どこかで会わない?」
その提案は見事に却下された。
仕事が忙しく、時間が作れないらしい。まぁ、そう焦るまい。呟きながら、自分を慰めた。
『心当たりがある人は注意を!』
そのニュースを見て驚愕した。
どうやら、オンラインパーティーには、高額なプレゼントを誘引するサクラが混じっているらしい。しかも、そのサクラは人工知能を持つAI。映像も音声も、セリフすらも捏造。つまりは、この世に実在しない人物ということだ。
心当たりがある人は注意を? ふざけるな。心当たりしかないよ。
一縷の望みを託し、僕は彼女に尋ねてみた。加奈子サンってもしかして――その瞬間、二人のルームは閉鎖され、二度とアクセスできなくなってしまった。
「クソッ! 完全に騙された! 生身の人間にならまだしも、AIに騙されるなんて!」
これまで彼女に使った金額を脳内で計算してみる。上司や得意先から怒鳴られながらも、頑張って働いて貯めた金。それを思うと泣けてきた。重く長いため息をつきながら、パソコンの電源をオフにした。
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