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「そういやさ、ラッテの新しいチョコのCM、観た? あのいかにもイチゴ~なやつ!」
「みたみた! 清々しいほどピンクだったけど、ちょっと食べてみたくなっちゃった。イチゴ味のチョコは結構あるけど、やっぱラッテのジーナシリーズで見ると格別……」
「ピンクのジーナで、ハッピーバレンタイン」
よし今だ──言うなり先程購買で買ってきた板チョコを三分の一ほどの大きさに割ったものを、やや開いていた月冴の口に押し込んだ。
あまりに唐突な出来事に、月冴の瞳がまんまるく見開かれる。
「ひょふと!? なほとどふぉしたふぉ、ふぉれ!?」
「ちょっと!? 尚斗どうしたの、これ!?」──思惑通り意表をつけたことに、満足して「ふふん」と少しだけ胸を張る。
「昨日美味しそうって言ってたから、食べたいんだろうなって」
「だからってお前、そんなまるまる口に突っ込むか?」
「いやまぁ尚斗だしね、やってもおかしかないけど……いやでもせめてもう少し小さくしてあげなよ」
散々な言われようだが、昭彦も亮平も、月冴の口からチョコを取り出すどころか何を思ったのかスマホを構え、写真を撮り始める。
『ピロリン♪』と軽快な音がその場にこだました。
「ひょふと!?」
「いや~なんか小動物みたいで可愛いなって」
「そうそう、ハムスターとかリスみたいな?」
「ふぁふすたー!? りふ!?」
口をもごもごさせながら月冴が頬を染め上げ、同時に目元も釣り上げる。
かわいそうに、チョコの角が頬に引っかかり膨れたように見える。
たしかにリスやハムスターに見えなくもない。
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