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「は、はいいいっ〜〜⁉︎」
……部長、今、何て言いました?
俺に惚れてみてくれないか。惚れてみてくれないかって言いました⁉︎
無理です、そんなの!
だって私、もともと部長に惚れてるのでーーー!!!
直立不動でフリーズしてしまった私に向かって、部長は柔らかい笑顔を見せる。
「心配しなくてもいい。効果はせいぜい一週間程度で切れるようにしておく。それに、ネズミの尻尾や人間の毛髪といった呪いじみたものは使用しない。あくまで人が食せるものだけを調合しよう。あと、心配があるとしたら少しだけ酒を混ぜることだが──」
「あ、あ、あのっ……でも、私……惚れ薬を飲んだら、大変なことになるかも……」
これ以上部長に惚れちゃって、ガンガン迫っちゃったらどうしよう。
私は口に出せない不安でいっぱいになる。すると、
「田宮くん……もしかして、君は──」
部長が急に真面目な顔つきになった。
ヤバい。私の恋心、部長に気づかれちゃったんじゃ……⁉︎
口から心臓が飛び出しそうなほどドキドキしている私の手を部長が握る。
そして、私の手の甲の青く浮き出た血管を撫でた。
ああああ、ダメです部長! そんなふうに撫でられたら……!
「ダメなのか? 田宮くん」
「はっ、はいっ……!」
「それは困ったな。でも一応テストさせてくれ」
えっ? テスト?
部長はパッと私の手を放し、薬品棚から何かを取り出して戻ってきた。
持ってきたものは、ガーゼと絆創膏と消毒用アルコールの瓶だ。部長はガーゼにアルコールを染み込ませ、絆創膏の上にピンセットで乗せている。
「何をするんですか……?」
「何って、アルコールパッチテストだよ、田宮くん。腕をまくってくれ」
部長はクールな表情で絆創膏をつまみ上げた。
「さっきも言ったが、惚れ薬には多少の酒を使う。君が不安になるのも分かるよ。日本人の約四割が酒に弱い体質だと言われているからな。アルコールに弱い体質なのかどうかは遺伝子のアセトアルデヒドの分解酵素の型で決まっているんだ。このパッチテストでは、君がどの程度アルコールを分解する力があるのかが分かる。それによって君に適した分量を決めるよ。それなら安心だろ?」
「は……はい」
なーんだ。部長に恋しているのがバレたかと思っちゃった。
はいはい、いつものパターンですねコレ。
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