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私は部長の言葉を聞いて、ハッと我に返った。
忘れてた。
私、いま実験体なんだった……。
ニコニコと嬉しそうな部長の笑顔は、私の告白ではなくて実験成功のためだったようだ。
もう、バカバカバカバカ、何度この失敗を繰り返せば気が済むのーっ!
部長が恋愛<化学の人だって、分かっていたのに〜!!
自分の頭を殴りつけてやりたいが、今はそれどころじゃない。
私は必死で部長を見上げた。
「あの、部長。さっきの発言なんですけど、あれ実は薬のせいじゃないって言うか……!」
「薬のせいじゃなかったら何なんだ?」
「だから、それは……」
「好きじゃないのか? 俺のこと」
「えっ。いえ……好きです……」
きゃあああ、もう何度言わせるんですか部長ってば!
部長は上機嫌でそうかそうかとうなずいた。
「よし。薬の持続性について調べたいからまた明日同じ質問をするとして。今日はこれまでにしよう」
「ま、待ってください!」
悲しいことに、それから私が何度「好きです」と言っても、部長は「効果覿面だな」と嬉しそうに笑うだけだった。
こうして七日間の実験を繰り返した結果、部長が作った惚れ薬は「持続性が高くて非常に強力」という間違ったメッセージ付きでみんなに配られることになったのである……。
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