65人が本棚に入れています
本棚に追加
バレンタインと俺
「店長、もう2月です」
「そうか、この前正月だと思ったのにあっという間だなあ」
「まだ正月ボケしてるんですか? 2月といえば、あれがあるじゃないですか?」
バイトの鏑木優香が詰め寄ってくる。
「節分か?」
「まったく、これだから店長は……2月といったらバレンタインでしょうが」
「あー、そんなイベントもあったな」
「店長だって今年は彼女もいるんですし、他人事ではありませんよ」
彼女と言われ、隅の席に座る園子さんに視線をやると、顎下までの髪を揺らして微笑まれた。園子さんというのは、このカフェの常連で、オムライスとミルクティーが大好きなとっても可愛らしい女性だ。そして、俺に初めてできた恋人でもある。
俺は顔が恐いらしい。だから、学生時代も女の子にモテたことなんかなかったし、バレンタインなんてものは自分とは無縁のイベントだった。
「せっかくですし、バレンタイン限定のメニューとか考えてみたらどうですか?」
「なるほど、期間限定メニューってのは面白くていいかもしれないな」
最初のコメントを投稿しよう!