バレンタインと俺

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 鏑木からの提案に呟くと、にやりと不敵な笑みを浮かべる。身構えたものの、にじり寄ってきた鏑木は俺の耳にあることを囁いた。  その日の夜から俺と鏑木はディナータイム後に店に残って、メニューの考案をすることになった。イベント期間を一週間とすると、時間の猶予も一週間しかない。 「園子さん、今日からしばらく閉店後に店に残って作業するので、俺はまだ帰れません。でも、家まで送りますね」 「え、終わるまで待ってますよ」  ちらりと鏑木の表情を窺うと、首を左右に振られた。 「何時になるかわかりませんし。それに、この店初めての試みなので、園子さんにも当日まで内容は秘密にしておきたいんです。だから……」 「わかりました。お邪魔したら悪いので帰りますね。時間もったいないでしょうし、まだ早い時間なのでひとりで帰れます。それじゃあまた」  園子さんは手早く荷物を整理すると、ふわふわと髪を弾ませながら店を出ていった。
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