わたしと嫉妬

1/3
54人が本棚に入れています
本棚に追加
/17ページ

わたしと嫉妬

 2月に入った途端、目に入る至るところがバレンタイン仕様になった。いつもは自分のご褒美用にデパートで高級チョコを買うだけ。でも今年は。厨房にいる大輔さんの背中を盗み見る。最初は威圧的で恐い人かと思っていたけれど、仕事に真摯に向き合う姿勢に惹かれ、去年からお付き合いすることになった。わたしにとって初めての恋人。時折見せる優しい表情がたまらなく好きだ。  けれど、最近気がかりなことがある。大輔さんの雰囲気が柔らかくなったからか、以前よりも店内の客と話すようになった。それ自体は喜ばしいことなのだけど、彼にファンがついたみたいなのだ。 「熊店長さん、こっち来て一緒に写真撮ろう」  若い女の子が大輔さんを呼ぶと、大輔さんはそれを断りもせずほいほいと近寄ってしまう。そして、女の子は大輔さんの腕に絡みつくようにして写真を撮る。 「熊店長さん、やっぱ最高。かわいすぎ」 「え、そうですか。ありがとうございます」  大輔さんは女の子たちにちやほやされて、嬉しそうで……いらいらする。いつもは彼の姿をよく見ていたくて、厨房から出てきたときはチャンスとばかりにじっくり眺めてしまうのだけど。これはちょっと見ていられなくて俯いた。
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!