バレンタインと俺

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バレンタインと俺

「店長、もう2月です」 「そうか、この前正月だと思ったのにあっという間だなあ」 「まだ正月ボケしてるんですか? 2月といえば、あれがあるじゃないですか?」  バイトの鏑木(かぶらぎ)優香(ゆうか)が詰め寄ってくる。 「節分か?」 「まったく、これだから店長は……2月といったらバレンタインでしょうが」 「あー、そんなイベントもあったな」 「店長だって今年は彼女もいるんですし、他人事ではありませんよ」  と言われ、隅の席に座る園子(そのこ)さんに視線をやると、顎下までの髪を揺らして微笑まれた。園子さんというのは、このカフェの常連で、オムライスとミルクティーが大好きなとっても可愛らしい女性だ。そして、俺に初めてできた恋人でもある。  俺は顔が恐いらしい。だから、学生時代も女の子にモテたことなんかなかったし、バレンタインなんてものは自分とは無縁のイベントだった。 「せっかくですし、バレンタイン限定のメニューとか考えてみたらどうですか?」 「なるほど、期間限定メニューってのは面白くていいかもしれないな」
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