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満月の夜に
二〇二一年 一月二十九日。
真っ暗な部屋でただ、ぼぅっと天井を見ていた。
空井鏡平(うつい きょうへい)二十二歳、男。
二ヶ月ほど前に一年務めた会社をやめて、実家でダラダラと過ごしている。所謂、ニートである。
「、、なにしよう」
特に何をするわけでもなく、ただ朝が来たら起きて時間が過ぎるのを待つ。
無駄な日々を過ごしていた。
もちろん、親に申し訳ない気持ちもあるが、それでも何もする気が起きない。
大体毎日家にいて、出かけることはしない。
でも、なぜだか今日は少し外に出てみようかという気になった。
夜なら尚更、人通りもないし良い。
まぁ、この近くは昼間でも人通りなんてないが。
「いくか、」
一度そう考えたら、無性に外に出たくなった。
何もする気が起きなかったのが嘘みたいだ。
スウェットに上着を羽織って、マフラーを巻いて部屋を出る。
家族も寝ている時間。家の中は静まり返っている。
「きもちい~」
外に出ると、冬の冷たい空気が頬をかすめた。
久し振りの外。外の空気が美味しい。
少し冷たい空気も、夜の匂いも心地いい。
思った通り、人通りはなく静まり返っていて街灯もない。星と月の明かりだけ。
まるで、世界に一人しかいないのではないかという感覚になる。
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