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「よし」
夜。、準備を終えて朝に買ったものを持つ。
食べてしまおうかとも思ったが、あの子のために買ったのだ。どうせなら食べてもらいたい。余計なお世話かもしれないが。
「ほんっと、さみぃ」
朝とは違って刺すような寒さが痛い。
昨夜は気持ちいいと思った風も今は厄介に思う。
「あ、いた」
少女はいた。ブランコに座って一点を見つめている。
「月歩」
少し大きめな声で名前を呼ぶと、ゆっくりと顔を上げてこちらを見る目と目が合う。
「ん、ほらやる」
レジ袋を差し出すとそちらに視線を移し見つめる。無理やり小さな手に袋の持ち手を握らせて隣に座る。
「朝居なかったけど、どっかいってたのか?」
朝、と呟いた少女は首を横に振る。
「私は月の子。月の見える夜にしか姿を見せられない」
「え、見せられないって?」
「そのままの意味」
そう言われても理解ができない。
「...その間どこに?」
「意識はないからどこにいるかは分からない」
それじゃあ、気づいたらもうあと新月まで数日しかないなんて事もあるのか。残酷だ。
「怖くないの?」
「怖くない。だって、そういうものだから」
そういうものだから。なんて悲しい。いや、そんなことは無いのか。それが普通なのか。
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