チョコレート売り場の三人の男

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 もう一つはジャスミンティー。 こちらは茉莉花(ジャスミン)の花で香りを付けた緑茶だった。 紅茶とチョコレートとの組み合わせ(マリアージュ)は分かるが、緑茶とはどうなのだろうか?と星合はパッと見て首を傾げた。  しかし、目下一緒に暮らしている(やなぎ)瑛志郎(えいしろう)はそうは考えないだろうと、星合はすぐさま考えを改める。 彼にご馳走してもらったジャスミン茶をミルクティーに仕立てた、その名もズバリ『ジャスミンミルクティー』はとても美味しかった。  毎朝、柳が飲んでいるのがこのジャスミンミルクティーか、濃いめに淹れたアールグレイのストレートにハチミツを落としたもののどちらかだった。 よりにもよって、チョコレートの味までもがこの二つとは! ――何とも悩ましい限りだった。 それとなく窺うとご時世柄、試食するのはご遠慮願っているようだった。  若い女性の店員にどんな味か聞けども、やはりと言おうか紅茶のフレーバー(風味)を言うばかりだった。    アールグレイにチョコレートの組み合わせ(マリアージュ)はある意味オーソドックス、――定番中の定番だしな!  星合はジャスミンティーの方を買うことにして、クレジットカードで支払いを済ませた。 決めてしまえばあっという間に買えてしまうのは、正直言ってありがたい。
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