チョコレート売り場の三人の男

4/7
前へ
/167ページ
次へ
 星合にしてみれば随分と思い切った、大胆な行動だった。 しかし、実質的には「ただチョコレートを買い求めに来ただけ」に過ぎなかった。  星合はふと我に返り、周りを見てみる。 すると、他の二人の男たちもそれぞれ注文をしているところだった。 「銘酒セレクションを五種類全部、一箱ずつください」 「この、生チョコ三種類セットを配送でお願いします。え?クール便?あぁ、そうか。生チョコだからか。じゃあ、そうしてください」 「・・・・・・」  前者は、贈った相手と一緒に食べ比べでもするつもりなのだろうか? いくら賞味期限が一か月くらい設けられているとしても、全て独りで食べ切れるとは星合には到底思えなかった。  見た目で判断するのはどうかと思ったが、とても『甘いものが大好きです!』という様な外見の男でもなかった。 体にピッタリと貼り付けような黒いコートを一分の隙もなく着こなしている、長身瘦躯、つまり背が高く痩せた男だった。  半ば額にかかる前髪以外は、両(サイド)も襟足も全体的に短めに刈り揃えられている。 似合っていることはにあっているのだが、星合が勤める会社では『部外者』にしか見られない髪型だった。
/167ページ

最初のコメントを投稿しよう!

93人が本棚に入れています
本棚に追加