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星合にしてみれば随分と思い切った、大胆な行動だった。
しかし、実質的には「ただチョコレートを買い求めに来ただけ」に過ぎなかった。
星合はふと我に返り、周りを見てみる。
すると、他の二人の男たちもそれぞれ注文をしているところだった。
「銘酒セレクションを五種類全部、一箱ずつください」
「この、生チョコ三種類セットを配送でお願いします。え?クール便?あぁ、そうか。生チョコだからか。じゃあ、そうしてください」
「・・・・・・」
前者は、贈った相手と一緒に食べ比べでもするつもりなのだろうか?
いくら賞味期限が一か月くらい設けられているとしても、全て独りで食べ切れるとは星合には到底思えなかった。
見た目で判断するのはどうかと思ったが、とても『甘いものが大好きです!』という様な外見の男でもなかった。
体にピッタリと貼り付けような黒いコートを一分の隙もなく着こなしている、長身瘦躯、つまり背が高く痩せた男だった。
半ば額にかかる前髪以外は、両横も襟足も全体的に短めに刈り揃えられている。
似合っていることはにあっているのだが、星合が勤める会社では『部外者』にしか見られない髪型だった。
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