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自分の様に『星合海』という男の名前が在るのならば、『西尾篤史』という女の名前も又在るのかも知れない。
その可能性は極めて低いように星合には思われた。
「・・・・・・」
別に男がおとこにチョコレートを送って、すなわち贈っていけない法はない。
そして、それが必ずしも愛の贈り物だとは限らない。
しかし、何と言っても明後日は『聖バレンタインデー』だった。
何よりも、スマートフォンと送り状とをひっきりなし見比べている『成田雅彦』の表情は真剣そのものだった。
表示された内容、――おそらくは『お届け先』の住所や電話番号を一言一句間違えないようにしているに違いない。
心なしか目は血走り、鼻の穴は開き気味になっていたがなかなかどうして整った凛々しい顔立ちを『成田雅彦』はしていた。
星合は仕事柄、もう既に家に居るだろう柳と思い比べてみる。
だいぶ濃く、そして野生的に星合の目には映った。
途端に、柳の顔が見たくてみたくて堪らなくなった。
チョコレートを買い求める際には念のために、帰宅までにかかる時間を実際よりも三十分長く告げて保冷剤を入れてもらった。
それにもかかわらず、星合は急いでチョコレートショップをデパ地下を後にした。
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