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末路のその先
「俺たちの監視のために入社したのか」
捕らえられて数日経ち、家川は雪丑と話す機会を得た。やはり彼らは研吸者で、雪丑はその一員らしい。
「そうですね。特に血浦先輩は、教会にアドレスを登録されていましたので」
「なんでそんなことお前が知ってるんだよ」
「情報管理がずさんなので」
想像以上に簡単にハッキングできましたと言って、雪丑はあははと笑った。
「血浦をどこにやった!」
「聞きたいんですか?」
押し黙った家川に、雪丑はまた笑う。
「あぁそう、実は誰かさんのせいで経営難だったんですけど、今回のことを近所の人が見ていまして。家川先輩が落ちる動画が出回ってるんですよ」
雪丑は動画を見せた。途中から不自然に落下速度が低下している。
「吸血鬼が今の世界混乱の原因だとか世論が高まっていて。経営に光が差すかも」
雪丑はフフフとうれしそうに笑って、さて、と家川を見下ろす。
「ひとつ交渉をしましょう。僕らはあなたを匿い続けるほど余裕がないんです。でも、僕らの目的は人間を守ることなんで、あなたを始末できません」
「何が言いたい」
「あなたは外じゃもう有名人です。外に出れば無事じゃ済まないでしょう。それでよければ、解放しますよ」
雪丑が嘘をついているようには見えない。
家川は自身の頭に手を伸ばした。そして、途中で止めた。
「そっか。俺はもう外に居場所がないのか」
「はい」
「教会とやらも、ダメだな」
「はい?」
「お前らは俺には手を出せないんだろ」
「だったら何です」
家川はしっかりと雪丑の目を見つめ返す。
「俺とは違う」
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