末路のその先

1/2
前へ
/12ページ
次へ

末路のその先

「俺たちの監視のために入社したのか」  捕らえられて数日経ち、家川は雪丑と話す機会を得た。やはり彼らは研吸者で、雪丑はその一員らしい。 「そうですね。特に血浦先輩は、教会にアドレスを登録されていましたので」 「なんでそんなことお前が知ってるんだよ」 「情報管理がずさんなので」  想像以上に簡単にハッキングできましたと言って、雪丑はあははと笑った。 「血浦をどこにやった!」 「聞きたいんですか?」  押し黙った家川に、雪丑はまた笑う。 「あぁそう、実は誰かさんのせいで経営難だったんですけど、今回のことを近所の人が見ていまして。家川先輩が落ちる動画が出回ってるんですよ」  雪丑は動画を見せた。途中から不自然に落下速度が低下している。 「吸血鬼が今の世界混乱の原因だとか世論が高まっていて。経営に光が差すかも」  雪丑はフフフとうれしそうに笑って、さて、と家川を見下ろす。 「ひとつ交渉をしましょう。僕らはあなたを匿い続けるほど余裕がないんです。でも、僕らの目的は人間を守ることなんで、あなたを始末できません」 「何が言いたい」 「あなたは外じゃもう有名人です。外に出れば無事じゃ済まないでしょう。それでよければ、解放しますよ」  雪丑が嘘をついているようには見えない。  家川は自身の頭に手を伸ばした。そして、途中で止めた。 「そっか。俺はもう外に居場所がないのか」 「はい」 「教会とやらも、ダメだな」 「はい?」 「お前らは俺には手を出せないんだろ」 「だったら何です」  家川はしっかりと雪丑の目を見つめ返す。 「俺とは違う」
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加