とある人間の気まぐれ

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とある人間の気まぐれ

 その、少し後の話。舞台は血浦の同期の家に移る。 「つまんねぇなぁ」  そう呟く彼の名は家川桐人。血浦の同期の中で唯一血浦の正体を知る者だ。 「なぁんか暗いし」  家川は仕事を後回しにして、テレビを見ていた。バラエティ番組の合間のニュースで、世界の気の滅入るような様子が映し出される。 「飲みに行きてぇ!」  家川は思い切り後ろに伸びをして、存外近くにあった壁に勢いよく両手をぶつけた。 「いったっ」  手が少し赤く腫れる。あぁこれは、いい加減仕事をしろと先輩たちが怒っているのかもしれない。家川は最大限の面倒臭さを込めてため息をついた。こんなに赤くなってるんで俺休みまーす。などと家川が返して、真面目な血浦の仕事が増えるのがお決まりだ。  家川は手首をクルクルと回してみる。特に支障ない。家川はまたため息をついて、ようやくパソコンを取り出した。  まずはメール確認かなぁと見てみると、丸一日近く経っている上司のメールがいくつか溜まっている。やべぇ、これは本当に怒られるぞと冷や汗をかく家川の視線は、2番目に新しいメールに止まる。 「保護団体、『教会』?」  なんだそれ、新手の迷惑メールか? 件名は謝罪しか書いていないし、内容はよくわからないし、妙なURLも貼ってある。  訝しむ家川だが、同時に好奇心をそそられる。 「幽霊でも映るのか?」  吸血鬼が鏡やレンズに映らないことは血浦から昔聞いたはずだが、残念ながらそれとこのメールを関連づけられるほど、家川は頭が良くない。  何がともあれ、何かが映っても映らなくてもネタにできそうだと、家川はカメラを申し込むことにした。
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