RPGとゾンビな俺

1/1
7人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ

RPGとゾンビな俺

「ぐわぁぁぁーーーーー」 カーテンの隙間からもれてくる光が剣となって、惰眠をむさぼる俺を容赦なく攻撃してくる。 ゾンビのような声をあげながら起き上がり、片目とカーテンをそっと開く。 最近なんだか目覚めが悪い。朝の光でゆらめいている天井を見上げた。 「もう無理・・・ごめん・・・」 たった数文字の言葉で、彼女に瀕死状態にされたのは1ヶ月前だ。 たいしてレベルが上がっていないのに、いきなりラスボス並みの攻撃。なすすべもなくゲームオーバー。 もちろんコンテニューなどはない。あの時から体力気力はほぼゼロだ。そんな体を引きずりながら、とりあえず洗面所へと向かう。 「カラカラカラーン」 床に置きっぱなしのビールの空き缶が足に当たり転がる。HP回復に飲んでいるが、何の効果も無しだ。 それにしても・・・ゴミ、今日こそは出さないとマズい。散らかった部屋を見渡した。 「6時55分!6時55分!」 毎朝見ているテレビからのタイムコール。そろそろ急がないとだな。 なんとか身支度を整え、パンを口に放り込み、牛乳を流し込む。 「今日の最も悪い運勢は・・・ごめんなさい。○○座です。」 俺の星座じゃん・・・えーっと、ラッキーポイントは・・・ゴミ捨て? そうそう!ゴミ、ゴミ、まとめないと!床に散らかったあれやこれを袋に放り込み、ギュッと口を縛り玄関へと急ぐ。 んんん?なんだか鍵が回らん。俺の負のオーラがこんなところにまで!頼む回ってくれ! 「おはようございますっ!」 ふいに後ろから声をかけられた。さっきの女子アナに似た声だ。 鍵を回す手を止め、ゆっくりと振り返ってみる。 お隣さん・・・だよな。会釈されたことはあったけど、挨拶されたのは初めてかもしれない。 「お、おはようございます・・・」 そう喉の奥から絞り出すと彼女がクスッと笑った。俺の繰り出した久しぶりの笑顔は、すごくヘタクソだったに違いない。 でも突然声をかけてくるなんて、まさか何かの苦情か?確かに今朝の声は気持ち悪かったと思うが・・・ しかし、彼女ずいぶんと重そうなゴミ袋を引きずっている。ついでだし持ってあげようか。あくまでもこれは善意からの申し出だぞ・・・って誰に言い訳しているんだ俺は。 「あの・・・」 「あの・・・」 ふいに声がシンクロした。 少しだけ彼女が驚き、肩をすくめながら、あどけない笑顔に変わっていった。 そして春一番が二人の間を楽し気に吹き抜けて行く。 new story?   YES or NO
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!