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RPGとゾンビな俺
「ぐわぁぁぁーーーーー」
カーテンの隙間からもれてくる光が剣となって、惰眠をむさぼる俺を容赦なく攻撃してくる。
ゾンビのような声をあげながら起き上がり、片目とカーテンをそっと開く。
最近なんだか目覚めが悪い。朝の光でゆらめいている天井を見上げた。
「もう無理・・・ごめん・・・」
たった数文字の言葉で、彼女に瀕死状態にされたのは1ヶ月前だ。
たいしてレベルが上がっていないのに、いきなりラスボス並みの攻撃。なすすべもなくゲームオーバー。
もちろんコンテニューなどはない。あの時から体力気力はほぼゼロだ。そんな体を引きずりながら、とりあえず洗面所へと向かう。
「カラカラカラーン」
床に置きっぱなしのビールの空き缶が足に当たり転がる。HP回復に飲んでいるが、何の効果も無しだ。
それにしても・・・ゴミ、今日こそは出さないとマズい。散らかった部屋を見渡した。
「6時55分!6時55分!」
毎朝見ているテレビからのタイムコール。そろそろ急がないとだな。
なんとか身支度を整え、パンを口に放り込み、牛乳を流し込む。
「今日の最も悪い運勢は・・・ごめんなさい。○○座です。」
俺の星座じゃん・・・えーっと、ラッキーポイントは・・・ゴミ捨て?
そうそう!ゴミ、ゴミ、まとめないと!床に散らかったあれやこれを袋に放り込み、ギュッと口を縛り玄関へと急ぐ。
んんん?なんだか鍵が回らん。俺の負のオーラがこんなところにまで!頼む回ってくれ!
「おはようございますっ!」
ふいに後ろから声をかけられた。さっきの女子アナに似た声だ。
鍵を回す手を止め、ゆっくりと振り返ってみる。
お隣さん・・・だよな。会釈されたことはあったけど、挨拶されたのは初めてかもしれない。
「お、おはようございます・・・」
そう喉の奥から絞り出すと彼女がクスッと笑った。俺の繰り出した久しぶりの笑顔は、すごくヘタクソだったに違いない。
でも突然声をかけてくるなんて、まさか何かの苦情か?確かに今朝の声は気持ち悪かったと思うが・・・
しかし、彼女ずいぶんと重そうなゴミ袋を引きずっている。ついでだし持ってあげようか。あくまでもこれは善意からの申し出だぞ・・・って誰に言い訳しているんだ俺は。
「あの・・・」
「あの・・・」
ふいに声がシンクロした。
少しだけ彼女が驚き、肩をすくめながら、あどけない笑顔に変わっていった。
そして春一番が二人の間を楽し気に吹き抜けて行く。
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